2009年ニューヨーク。あらゆる病気に効く万能薬が、一人の医師(エマ・トンプソン)によって開発される。それから3年後の2012年。その薬の副作用で多くの人間が新種ウィルスに感染、狂暴化し人間を襲い始める。そして、軍人であるロバート・ネヴィル(ウィル・スミス)一人を残し、人類は全滅したと思われた。ロバートは、夜な夜な襲い来る感染者の襲撃に怯えながら、一人黙々とウィルス研究に没頭し、何とか感染者を救う血清を作り出そうとするが…。
リチャード・マシスンの古典的SFの傑作『
アイ・アム・レジェンド (ハヤカワ文庫NV)』(邦訳別題『地球最後の男』)の3度目の映画化作品。ラストは映画オリジナルのものに変えられたものの、原作の持つ、主人公の絶望的孤独感が見事に浮き彫りにされた、巧みな映画化作品だ。監督のローレンスは、プロットよりも、「地球最後の男」というモチーフに惹かれたと言っているように、「孤独の研究」とでもいうべき、主人公の心理的描写に力を入れている。冒頭の廃墟化したニューヨークの描写も、文字ではとうてい敵わない、映画ならではの視覚的インパクトがあり、雰囲気満点。
これまでも、『
インデペンデンス・デイ [Blu-ray]』(1996/ローランド・エメリッヒ監督)や『
メン・イン・ブラック [Blu-ray]』(1997/バリー・ソネンフェルド監督)などで、人類を何度も救ってきたウィル・スミスである。だから、本作においても、人類の危機を救うと聞いて、おそらく今まで同様、ハリウッド(アメリカ)的ヒロイズムを賞揚するような能天気な人物を演じるのだろうと考えても不思議ではない。実際、今までのウィル・スミスは、人類の危機という状況においても、重荷を背負っているような印象は微塵もなく、むしろその状況を嬉々として楽しんでいるようなところさえあった。
しかし、本作でのスミスは、今までとは全く違う。もちろん、「地球最後の男」ということで、たった1人で人類を救う(正確には、再生する)という重い責務を背負っているという条件の違いがあるのだろうが、孤独と絶望の中で、まず敵と戦う前に、自分自身と向き合い、孤独と闘わなくてはならないという人物は、今までになかった。内省的人物ということで、スミスの演技は自然、エモーショナルなものになる。このスミスの1人演技が素晴らしい。いつものように愛嬌のある笑顔はなく、物思いに沈んだ表情、恐怖に怯える表情、そして、泣く表情…で、人間との触れ合いを渇望する孤独な人間の姿を見事に浮き彫りにしている。とりわけ、唯一の話し相手(というより、もっと大きな精神的支え)であった愛犬のサマンサ(サム)が、ウィルスに感染し、次第に狂暴化しつつあるのを自分の手で始末をつけなくてはならないシーンのやるせなさ、せつなさは、スミスの顔をじっくりと写す長回しの演出も手伝って際立っている。胸が締めつけられるシーンだ。絶望的な世界の中で、3年間苦楽(おそらくは苦ばかりだった)を共にしてきた愛する者の生命を自分の手で奪うという非情な運命。こういった、前半の主人公ネヴィルの丹念な心理描写の演出と演技は、間違いなく、過去に映画化された2作品を超えているといっていい。
だからこそ、後半に、CGによる狂暴な感染者たちが大挙して、ピョンピョンと跳ねながらスクリーンを暴れまわり、前半のトーンが一転、昨今溢れまくっているゾンビ作品(というより、ほとんどTVゲームに近い)の亜流に堕すのに正直ガッカリさせられるのだが、それでも、全体として観た場合、監督のローレンスと脚本家のゴールドマンが目指したというシリアスな(ドラマ部分がしっかりした)SF作品―ゴールドマンは『
猿の惑星 [Blu-ray]』(1968/フランクリン・J・シャフナー監督)、『
サイレント・ランニング【ユニバーサル・セレクション1500円キャンペーン/2009年第4弾:初回生産限定】 [DVD]』(1972/ダグラス・トランブル監督)が好きだという―としての体裁は見事に保たれていると思う。
本Blu-rayは、2007年の作品ということもあり、色調、ディテールの表現力が素晴らしい画質。5.1ch Dolby True HDの音声も実にバランスがいい。特典には、Alternate Version(別エンディング版 HD)、メイキング”Creating I Am Legend”(約51分 SD)、ウィルスに関するドキュメント”Cautionary Tale”(約20分 HD)、コミック(アニメ)版「アイ・アム・レジェンド」(約21分 HD)が収録。Blu-rayの大容量を生かした素晴らしい1枚だ。