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2,906 人中、2,878人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 1.0
訳者からの事情のご説明,
By 迷羊 - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: アインシュタイン その生涯と宇宙 下 (単行本)
私は本書の上巻の5-11章の翻訳を担当した松田です。この下巻の12,13,16章、特に13章を巡る、滑稽かつ悲惨な内部事情を知っている範囲でのべ、読者にお詫びをすると同時に、監修者と訳者の恥を濯ぎたいと思います。本書の翻訳は数年前に監修者の二間瀬さんから依頼されました。私は自分の分担を2010年7月に終えました。翻訳権が9月に終了するので急ぐようにとのことでした。ところがいっこうに本書は出版されず、今年6月になり、いきなりランダムハウスジャパンから、本書が送られてきました。そして13章を読んだ私は驚愕しました。 私は監修者の二間瀬さんに「いったい誰がこれを訳して、誰が監修して、誰が出版を許可したのか」と聞きました。二間瀬さんは運悪くドイツ滞在中で、本書を手にしていませんでしたので、私は驚愕の誤訳、珍訳を彼に送りました。とくに「ボルンの妻ヘートヴィヒに最大限にしてください」は、あきれてものもいえませんでした。Max BornのMaxを動詞と誤解しているのです。「プランクはいすにいた。」なんですかこれは。原文を読むと、プランクは議長を務めたということだと思います。これらは明らかに、人間の訳したものではなく、機械翻訳です。 先のメールを送ってから、監修後書きを読んで事情が少し分かりました。要するに12,13,16章は訳者が訳をしていないのです。私は編集長にも抗議のメールを送りました。編集長の回答によれば12,13,16章は、M氏に依頼したが、時間の関係で断られたので、別途科学系某翻訳グループに依頼したとのことです。ところが訳のあまりのひどさに、編集部は監修者に相談せずに自分で修正をしたようです。12,16章の訳はひどいなりにも、一応日本語になっているのはそういうことだと思います。ところが13章は予定日までに完成しなかったらしく、出版期限の再延期を社長に申し入れたが、断られた編集長は、13章の訳稿を監修者に送ることもせずに、独断で出版したらしいです。重版で何とかしようとしたようです。出版を上巻だけにして、下巻はもっと完全なものになってからにすればよかったのに、商業的見地からは、上下同時出版でないとダメだそうです。 二間瀬さんは社長に、強硬な抗議文を送り、下巻初版の回収を申し入れました。社長も13章を読んでみて驚愕したようです。そして回収を決断しました。 自動車のリコールがときどき問題になります。そして社会的指弾を浴びます。しかしあれは発売時点では欠陥に気がついていなかったはずです。ところが本書の下巻は、発売時点で、とても商品として売れるものでないことは明らかでした。本書下巻を2000円も出して買った読者は、怒るに違いないと、二間瀬さんに指摘しました。またアマゾンで書評が出たら星一つは確実だとも述べました。 本書の原書は名著です。私は自分の担当の部分を訳して、とても勉強になりました。ですから本書は日本の図書館に常備されるべき本だと思います。ところがこの13章の存在のため、もし初版が図書館に買い入れられたら、監修者と訳者の恥を末代にまで残すことになります。より完全な下巻の完成を期待しています。
16 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
概ねちゃんとした日本語にはなったが,
By スカルダネリ (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: アインシュタイン その生涯と宇宙 下 (単行本)
第2刷修正版を入手しました。問題の第13章は,第1刷と同じ「編集部が手配した」(監修者あとがきより)ものの改良版であるらしく,第1刷に比べて概ねちゃんとした日本語にはなったものの,かなり直訳調で,読みやすさはいまひとつ。少なくとも"the secluded temple of science."の「人里離れた寺」は「世間から隔絶した神殿」, icon は「アイコン」より「イコン」の方がよいのでは。ともあれ,とりあえず意味は取れるレベルには達しましたので,他の章に免じて星4つを献上いたします。 (以下は当初書いたレビューで紹介した部分の修正後) p.39 時々,大きな声でけらけらと笑い,終わりに会合全体を「たいへん楽しい」と断言した。 p.41 マックス・ボルンの妻のヘートヴィヒは,彼の家族に対する扱いについて,遠慮なく彼に叱ったことがあった。今,彼女は彼に,「むしろ不幸となる回答に駆り立てられるのを自制すべきだ。」と説教した。「科学という人里離れた寺」にもっと尊敬を払わなければいけない,と彼女は言った。 p.45 アルバート・アインシュタインの爆発するような世界的名声と芽生え始めたシオニズムは,一九二一年の春,あるイベントで一緒になった。そのイベントは,科学の歴史において特別なもので,実際どの分野にとってもすばらしいものであった。合衆国の東部から中西部を通る二ケ月に渡る大行列が,大衆の集団ヒステリーを引き起こし,新聞もツアーで回るロックスターをぞくぞくさせるようなお世辞記事を流した。世界は,このような科学分野の著名人でスーパースター,また,人間性を評価されて優しげなアイコンとなったり,ユダヤ人にとって生ける守護聖人になったりするようなこの人物を,かつて一度も見たことはなく,おそらく二度と見ることもないであろう。 p.62 それは驚異的な場面だったが,クリーヴランドではそれ以上だった。何千人もの人が,訪問代表団を見ようとユニオン鉄道の駅に群がった。そして,パレードは二〇〇台の警笛を鳴らし旗を飾った自動車があった。 *本記事は9/4に投稿したものです。7/4付けのレビューはその後管理者削除されました。理由は確かめていませんが,原著から原文を引用した直後です。第2刷入手に際し改めて投稿してみたところ受け付けられました。
7 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
アインシュタインの伝記として価値ある1冊,
By firefox (東京) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: アインシュタイン その生涯と宇宙 下 (単行本)
翻訳修正版を読んだ。アインシュタインに関する書物は、それこそ無数にある。いまさら出版する意義なんてあるのか?そう思う人も多いだろう。たしかに科学的業績は、多方面から研究されている。だが個人としてのアインシュタイン像は、これまで必ずしも真実が伝えられてきたとは言えなかった。その理由は、遺品管理側が、聖人としてのイメージを壊さないように、情報公開を制限してきたからだ。しかし1980年代後半から、徐々に手紙類が公開されるようになって、アインシュタインの人物像がより鮮明になってきた。情報公開を受け、90年代から何冊かの伝記が書かれ、日本でも出版されたが、それらはワイドショー的な要素が強く、後世にのこるほどの価値はなかった。そして2008年に出版され、今年翻訳されたのが、本書である。 全体の構成は、科学:プライベート面:社会的側面が、3:4:3といった感じだろうか。この本の特徴は、人間アインシュタイン像を描いていることに加えて、複数の新情報があり、さらには、あいまいだった点の再検証がされていることだろう。 たとえば少年時代に、叔父から影響を受けたというのは定説だが、それよりも家族が食事に招待した貧しい医学生からのほうが、知的刺激を多く受けたこと(彼らはアメリカで再会している)。最初の妻がどの程度まで1905年の奇跡の年に、学術的な貢献をしたか(あるいはしなかったのか)。アインシュタインの"長女"のその後。ノーベル賞の受賞の知らせは、日本への途上ではなく、その前から知らされていたこと。またそのノーベル賞受賞をめぐる、裏側でのきなくさい駆け引きなど。とくにぞくぞくしたのが、1915年の一般相対性理論完成前の、数学の王ヒルベルトとの激しいデッドヒートである。ここらへんはアブラハム・パイスの神は老獪にして…-アインシュタインの人と学問にも書かれていたが、まさか、数日の差まで肉薄していたとは驚きである。 1冊の本に書かれたことを鵜呑みにするのは危険である。一例として、1939年にアインシュタインが署名した大統領宛の手紙と、マンハッタン計画の開始には大きな飛躍があるが、本書では直接的な影響があったような記述になっている。さらなる研究がつづくことを期待する。 巻末は例によって、出典が列記されているが、重要な情報も追記されており、目を通すことをお勧めしたい。今後のアインシュタインの伝記は、この本を超えるか否かで評価される、21世紀の基準本となるだろう。最近出版された伝記ものとしては、グレアム・ファーメロ の量子の海、ディラックの深淵――天才物理学者の華々しき業績と寡黙なる生涯と同じくらいの価値があると感じている。 さて、最後に翻訳についてすこしコメントしたい。過去に海外で有名になった科学書が、日本に来たとき、どこかの有名教授の努力で、ぼろぼろの翻訳になった例を数多く読んできた。そのため原書で読む能力のない私にとっては、翻訳家のプロ意識に大いに敬意を表している。そしてこの本はプロが翻訳したものであると言えよう。しかし13章は急いで改訂を加えたせいであろうか、すこしぎくしゃくしていた。"彼"や"彼ら"というのが、誰のことなのか、わからないところがあった。また上巻とくらべて、段落のつながりが流麗でなく、調子が途切れる部分もあった。 星は5つでも良かったが、個人的には科学面をもう少し多くしてほしかったので、4つにした。
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