啓蒙書を読み飽きた人が読むのには良いだろう.
「高校生にも理解できる」と書いてあるが,普通の高校生には理解できないと思う.
むしろ,説明は天下り的で完備ではないので,この本だけを読んで内容を理解できたと
思ってしまった人は注意が必要である.
しかし,独特な語り口調と例え話で物理の雰囲気を味わうことができる本である.
ちなみにきちんと理解したい人はこの本を頑張って読むより
各分野で定評のある本を読む方が近道である.
本書の構成は
1章:特殊相対論
2章:量子力学,量子電気力学(QED)
3章:一般相対論
となっている.
1章ではミンコフスキー図を用いて特殊相対論を議論する.
少しだけ数式が出てくるので、言葉だけの啓蒙書では満足できなくなった人が
読むには非常に良い.普通の高校生でも十分に読めるであろう.
2章ではQEDのFeynman図の計算を最終目標としている.
啓蒙書などでよくお目にかかるFeynman図であるが,これには概念的な
意味だけではなく,実際に数式が対応しているということを知ることができる.
著者の散乱断面積についての説明の方法も面白い.
しかし,微分方程式や行列がたくさん出てきて高校生が理解するには
少々難しい難しいのではないか?
(ぶっ飛んだ高校生は別として)
かく言う私も高校生のときに量子論の章で挫折した.
3章は一般相対論の説明で,微分形式を使って曲率を求める計算を行っている.
著者は,微分形式を用いた一般相対論の美しさと,カルタン構造方程式を用いて
曲率を求めることのできる感動を伝えたかったんだと思う.
しかし,この感動は座標を入れて曲率を求める泥臭い作業を行った上で
初めて感じ取れるものだと思う.(少なくとも私はそうだった)
啓蒙書をたくさん読んだ人は1章は楽しく読めるであろう.
2・3章は人それぞれだと思う.ただし,楽しめなかったからといって
物理のセンスが無いと言うわけではない.
この本のコンセプトである「雰囲気を感じてみる」ことは
できるだろう.
数式の雰囲気を感じることで啓蒙書と専門書を繋ぐ
今までに無かったタイプの良い本である.