堀江さんの中でも、この回送電車シリース゛は私にはタマラナく好みのタイプの本です。短い散文集というかエッセイというか、書評も交じってるし、捕らえどころが、う〜ん...、というカテゴライズされる事を嫌う様な、いつもの堀江さんの文章です。
いつもの通りの、計算されていない様に感じさせる、そこから生じる素朴感を失わせずに、恐らくは緻密な計算のもとに書かれている、読ませているのであろう細かな伏線や気づき、些細な物事のささやかな違い、そこから感じられる穏やかな視線や、気遣いなどを読み手の心に余韻を残す、いつもの文章です。
中でも私が気に入ったものは、「ネクストバッターズサークル」の何処にも所属していない、宙ぶらりんのような円と、雨の日のバスに乗り込むときの濡れた傘との関係や、「メロンと瓜」の細かな記憶の糸がたどらせ、めぐり合わせたメロンと瓜から広がっていく世界の中の【顔】の事や、「古書センターで一万円がっちり買いまショウ。」の堀江さんが選ぶ本の関係性や、「新宿の西から早稲田の西へ」の受験生から新入生への変化の時期の人と人の些細な繋がりがもたらす変な感情、「プルーストへの感謝」の骨董店店主と私のやりとりのおかしみ、「この指と、この指と、この指が」の武田百合子の素晴らしさ!、「明かりの質」の白熱電灯への偏愛の吐露、「ドーラについて私が知っていること」のドーラと私と携帯電話の奇妙な関係、「スポーツマンの猫」のモーニングセットから繰り出される妄想の世界への旅立ち、「ファラオの呪いが町田まで。」の短い旅行記とも言える行程とファラオの呪いの正体、などなどさりげない、何気ない日常をたまらない何かに変えるチカラをもった文章が素敵です。
特に表題作「アイロンと朝の詩人」は素晴らしいです、「彼女はスラックスのうえを行ったり来たりする」から私が想像してしまったものと、朝の、知らないうちに詩人になってしまっていた生徒と先生の間柄は好きです。
堀江さんファンなら是非!、また知らなかった事に気づく楽しみを味わいたい方にオススメ致します、日常が変化していきます。タイトルをつけるセンスも(私個人が)好きです。