元大使が赴任国について書いた本はいろいろあるが、この本の好感を持てるところは、妙に批判的であったり、やたらうがった見方をしたりしていないところ。
著者の赴任国であったアイルランドの身近なもの(じゃがいもとか、ハイネケンとか)から、歴史的な問題(イギリスとアイルランドの対立と和解、日韓の歴史問題との比較分析)まで、ストレートなまなざしで、思慮深く論じている。
文章はわかりやすく、トピックも豊富。ともかく内容の充実した本。学者の書いたものと違って気負いがなく、ジャーナリストの文章よりつっこんだ叙述がなされている。
アイルランド研究の入門書としても、これからアイルランドを旅行しようとしている人の観光ガイドとしても最適の書。だが、なによりも、他国を「理解」するとはどういうことかを学ぶうえで、とくに示唆に富んでいる。