アイルランド和平の秘密交渉のため,宿泊中のロッジで起こった殺人事件。テロリスト,旅行者,科学者,いずれも胡散臭い宿泊者たち。警察に届けるわけにもいかず,監禁状態の中での腹の探り合い。そして,前半で示唆される暗殺者「ブッシュミルズ」の正体は?
アイルランドを舞台にした活動家と日本人化学者の推理合戦。密室劇というと物理的に,あるいは心理的に無理が生じる事が多いが,秘密活動中のテロリストによる監禁,さらにアジトとして建てられた防音の効いたロッジという設定で無難にクリアしている。
人物造型もしっかりしていて,とてもこれが長編デビュー作とは思えない完成度。ただ,「扉は閉ざされたまま」(祥伝社ノンノベル)を先に読んでいたので,どうしてもあの完成度と比べてしまい,星ひとつ落とした。