カイリー・ミノーグ、ブリトニー・スピアーズ、マライア・キャリー、パリス・ヒルトン、タタ・ヤン、倖田來未、後藤真希・・・。エロティック/セクシー系(転向)アーティストは数多くいます。でも、このドキュメンタリーを見て思うに、何の思想もなく、「とりあえず」「まったりと」消費社会の風景のなかに自分の衣服や身体を溶けさせて、その場その場でオーディエンスとともに「強度」を楽しむセレブリティ=勝ち組になるという空疎な生き方を避け、「意味」を求めているセクシー系転向アーティストは、マドンナだけではないでしょうか。身体の「強度」だけではなく精神の「意味」を求めようとするマドンナの世代性が、80年代の「ライヴ・エイド」への参加、結局撤回するに至ったものの『アメリカン・ライフ』でのアメリカ批判や、カバラ信仰や、自己のエロティシズムに関する「芸術家の自己表現」という断言につながり、「意味」よりも「強度」を求めていく一方の日本の受け手には「西洋人の理屈っぽくダメなところ」に映るんでしょうが、です。しかし、マドンナはライヴ開始前「日本のビジネスマンが携帯端末を鳴らしても怒らない?」というジョークで共演者を笑わせます。彼女にとって日本人は無意味に、忙しく共同性に生きている生き物なのでしょう。いくら彼女の振り付けがエロをかすめても、アジアにありがちな観客への商業主義的で露骨な媚態ではなく、誰にも媚びない自由奔放で強靭な精神の体現を感じさせてくれるのがすばらしいです。
『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』よりも映像が美しいです。そして、字幕が英語と日本語とが選べるのもいいですね。音声もリニアPCMだけではなくドルビーデジタルもあります。ところが、商品には、倖田來未の推薦文が書かれたステッカーが貼られているので、星4つです。格のちがいを弁えてくださいよ。