ユダヤ人絶滅計画に決定的な役割をはたしたアイヒマンについては逮捕と処刑についてはよく知られているが、逮捕〜処刑までのアイヒマンについてはあまり知られていない。この本はアイヒマンを逮捕後の拘留中の監視及び尋問の方法、そしてこの本のメインであるアイヒマンとの尋問のやりとりが記載されている。拘留中のアイヒマンの調書の一部は70年代に月間誌「プレーボーイ」で読んだ記憶はあるが、ここまで詳しいやり取りの調書は今回がはじめてである。
親を収容所で殺されたレス大尉が取り調べ官として尋問を行う過程においてアイヒマンは単なる有能な事務官僚に過ぎずナチズムなどの確固とした政治信条を持ち合わせたことの無いことにすぐに気づくが、それと共にそのことを強調することで自分の過去の行いを上からの命令で行なったことにすることで、すこしでも刑を軽くする旨の発言を繰り返すアイヒマンに対し膨大な資料を読み込にんで行なうレス大尉との尋問のやり取りは非常に興味深く、押えようもない緊迫感と緊張感に満ちていて、たぶんこれは実際の裁判をはるかに凌ぐリアリティーに満ちていると思われる。そうした過程での取り調べの日々である日提出された詳細な資料に対しアイヒマンは動揺し、答えに窮してしまい事実上自らの負けを認める過程の取り調べは圧巻であろう。
非常におすすめの1冊です。