文化人類学者、加藤九祚の一人雑誌である。A・ピガレフの『比較文化論』は大学の教科書として書かれた。教科書は退屈なものと決めつけられがちだが、教科書ほど体系的で簡潔なものはない。一番手っ取り早く学びの畔に立たせてくれる。『比較文化論』は網羅的に広がりがちな世界文明を鋭く切り取って、余すところがない。古代オリエント、ギリシア、キリスト教文化等、知の広野を、迷うことなく案内してくれる。まさに砂漠の夜空に輝く星々のごとくである。原書は訳者がウラジオストクの小さな本屋で見つけた250円の本だという。こんなにも内容豊かであるとは、まさに出会いの妙というべきか。84歳の老学者、加藤九祚の眼力の確かさに驚かされる。
本書は原書の1部だそうだが、その壮大さは十分に味あうことができる。装丁が地味で、とっつきにくいが、読むほどにひきこまれる。
書名の『アイハイム』はお月様という意味だそうだ。加藤九祚が今もって発掘を続ける中央アジアの月を仰ぎ見てのことだろうか。