スーパーマーケットのお買い得品の値段に198円とか398円といった具合に8円という数値が用いられるのはなぜなのか。ヤマタノオロチというのは頭が8つある大蛇という意味なのか、それとも首と首の間のマタが八つある大蛇という意味なのか。そしてアイドルのウエストはなぜ58センチなのか…。
そうした卑近な題材を取り上げならが、日本語の数が人間の潜在意識にどう働きかける力を持っているのかについて、古今東西の資料を読み込んでまとめた一冊です。
著者は中央大学で教鞭をとる言語学者で、日本語の助数詞の研究が専門とのこと。
著者についても、そしてまたこの本の中身についても一切予備知識を持たずに手に取りました。本書のタイトルに一本とられましたね。日本の芸能界の裏話めいたことが書かれているのかと妄想を膨らませて読み始めましたが、これがいたってまじめな言語学的研究の産物であると気づき、不明を恥じたものです。
しかし書かれているテーマはもともと私の長年に渡る興味の範囲にあるものだけに、これまでも様々な書物で類似の記述に出会っている気がしました。そのため目新しさを感じることがありませんでしたし、私を引き寄せた「アイドルのウエストサイズの謎」も、私の想像を超えるものではありませんでした。スーパーマーケットのお買い得品の値段のくだりも、私ならずともおそらく多くの消費者が多少なりとも気づいている事柄ではないでしょうか。
おそらく本書は中学生から高校生くらいの読者であれば、楽しく読めると思います。言語の第一の機能が、相手に対して自分の考えを明確に伝えるための手段であると考える若い世代には、言語の持つ巧妙さ、そしてその巧妙さに先に気づいたものこそが、この社会で一歩先んじる可能性もあるのだということに、目を開かせてくれる効果は十分にある一冊だと思います。