本書では、自分のアイデンティティに即したコード(「規範」)に従うか否かが、大きく選好に影響を与えるモデルが提案されています。非経済的な選好がどうやって発生するかにメスを入れた、経済学と社会学を融合するような意欲的な一冊となっています。
行動経済学は利己的な個人という制約を緩め、より多様な選好を経済学研究に持ち込みましたが、依然として選好自体は所与としています。つまり、どのように選好が定まるか、というプロセス自体はブラックボックスに包まれています。一方、アイデンティティ経済学では、どういった社会的な環境・文脈が選好を形成するのか、というよりファンダメンタルな問いに答えようと試みています。現状では、選好形成の鍵となる「規範」が完全にアド・ホックに与えられているのが大きな問題ですが、このアプローチ自体は可能性を秘めていると思います。
今後の発展が楽しみな分野、ということで(現段階での成果についてはやや不十分な気がしますが)、期待を込めて☆は5つ!