監督のジェームズ・マンゴールドは、本作のほか、『ニューヨークの恋人』『ウォーク・ザ・ライン』、『3時10分、決断のとき』などを演出した。中でも『17歳のカルテ』は出世作に当たるだろう。純然たるサスペンス(スリラー)は、『アイデンティティ』のみで、若いゆえに器用なのか作風も多様で、才能を感じる。本作には、ジョン・キューザック、レイ・リオッタ、レベッカ・デモーネイ、『17歳…』にも出演した(おそらく監督のお気に入り)クレア・デュヴァルなど味がある実力派の役者が揃って、恐怖感を一そう盛り上げている。
本作を、意外な拾い物という感じで受け取る人が多いようだが、それは公開時の宣伝などの扱いが小さかったという所から来ているのだと思う。本格サスペンスのようなどっしりとした趣こそないが、小手先の変化球というには面白すぎる息もつかせぬ展開と、登場人物が増えるごとにどんどん深まる謎と恐怖、そして人によって評価が異なる「あっという結末」まで、見ごたえ十分。B級映画の薄っぺらさとは無縁で、設定に沿ってよく練られた脚本といい、ネタに陥らない演出といい、地味ながら隠れた傑作と呼んで構わないだろう。他の作品でも見られる、得意の心理描写が、この映画に奥行きを与えることに成功している。
結末を知ってしまうと、この手の映画によくある超安易な「ゆ●オチ」「う●●う●●オチ」など、「騙し」のバリエーションの一つにすぎないじゃないかと酷評したくなるむきも、わからないではないが、それらよりはるかに巧妙で複雑。ミステリーがとても似合うキューザック、スリラーならこの人・リオッタほか役者陣の演技も上手いし、たたみ掛ける恐怖の演出も見事。ぜひ安心して「騙されて」いただきたい。