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19 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
人間アマルティア・センの平和論,
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レビュー対象商品: アイデンティティと暴力: 運命は幻想である (単行本)
センの平和論は「アイデンティティの選択」という人々の認識の問題が、現実世界に統制された描写よりも重みをもつ可能性があることを示している。これはイデオロギーやナショナリズムが対立軸であった冷戦時代が崩壊し、それにかわって文明や宗教といった新たなベクトルが対立軸として認識されることが主流となりつつある世界において、アイデンティティの虚構性を我々に気づかせてくれる、インパクトをもつメッセージである。センは人間の可能性を矮小化すべきではないと主張する。人々の可能性は無限であり、そのなかから理性的な選択をすることにより、制約条件はあるもののいつか「暴力の非制度化」が可能であるという思いが込められている。センの平和論は体制改革というよりも、リベラリズムの伝統に根差した「個人の自由」である。本書は、人間アマルティア・センの「自由主義的平和論」を理解するには必読の書である。
9 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
世界を個々のアイデンティティから捉えると・・・,
By パピプペ・ポポン (名古屋) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: アイデンティティと暴力: 運命は幻想である (単行本)
著者であるセン氏が言いたいことは、人は単にひとつのアイデンティティを持っているわけではなく、同時にたくさんのアイデンティティを内包しているということ。そして、「人はその時々の局面でどのアイデンティティを選ぶか」という権利と自由を持っている。また、そう言う自由を認める社会でなくてはいけない、ということ。というのも、往往にして人は他者の目で選ばれた自分の中のアイデンティティを押し付けられるから。例えば、「テロ」をイスラム教と関連づけること。イスラム教徒は自分の中からイスラム教徒というアイデンティティだけを取り上げられて、キリスト教と対峙させられる。どちらの側からも。つまり、アメリカそしてイスラム原理主義者の両方から同じように自分のアイデンティティを利用されてしまう。世界の地域で起こっている紛争や残虐行為は、アイデンティティを単眼的に捉えることから起こる。これが世界を暴力に向かわせているとセン氏は言う。民族しかり、文明しかり。ひとつのアイデンティティを掬いあげられて、他者から押し付けられた正義。「〜〜〜だから、こうあらねばならない」ということ。伝統なんかもそう。伝統だから、女は相撲の土俵に上がってはいけないとか・・・。その時、わたしは「日本人である」(日本の伝統を重視する)アイデンティティと「女権拡張論者」であるアイデンティティとのどちらを優先するのか。その優先順位を付ける自由はわたしにある。正義は人それぞれで違う・・・、相対的であらざるを得ないと言うことか。 セン氏はこの「世界が暴力へ向かう」ことを自分のアイデンティティの自由を確保することから解決の方向に向かわせようとしているが、同時にセン氏はわれわれが持ついろいろなアイデンティティを抹消することなく、グローバルなアイデンティティを持つこと、グローバルな正義を持つことは可能であると言っている。「人々が『共感』に基づく意志決定をする限り、そこに社会的アイデンティティの存在を認めざるをえない」と。つまり、絶対的な「正義」があると言うことか。 何を基盤に全人類は「共感」を持つのか。「正義」、「倫理」という事か。あるいは、もっともシンプルな「人間」ということなのか。セン氏は具体的にそれが何かを示してはいないが、現在、国際的機関ではなく、一市民の行動で世界が繋がりつつある。世界から見れば微小な力ではあるが、この答えの一つではないかと思う。
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
アイデンティティを元に争う必要はあるのか,
By NS - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: アイデンティティと暴力: 運命は幻想である (単行本)
宗教や文明、国別の対立はそれぞれのアイデンティを重視するために生じているが、アイデンティティとは一個人がひとつしか持たないものではなく、実は多様なアイデンティティを持っており、その多様性を自覚し他者と連携することこそが争いを回避し平和な社会をつくるために重要、と解説しています。現在生じている対立の原因は宗教と文化にある、と短絡的な決め付けをし、その考えをあおる事は対立激化に繋がると警鐘を鳴らしていますが、それを読んで様々なアイデンティティを振りかざし他人を自分に同調させようと強制するのではなく、互いに同じ「人間」であることを自覚し相手の考えを尊重しつつ協調していくことが重要であると感じました。多くの方に読んでいただきたい名著だと思います。
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