08年10月の単行本の文庫化.明治維新からしばらく経った東京が舞台となっていて,
目まぐるしく移りゆく時代の中,西洋菓子職人である主人公とその友人たちの日常や,
彼らの回りで起きるあれこれを,軽めの謎解きを交えて描かれる五編の連作短編集です.
ただ,流れがどうにも散漫と言いますか,会話や状況を『見失う』ことがよくあり,
特別にクセのある文体や,この時代特有の聞き慣れない言葉が多いわけでもないのに,
ページ数の割に時間が掛かってしまい,読み終えた後にはちょっと疲れてしまうことも….
他にも,アイスクリンやチヨコレイトなど,各編のタイトルに冠されたお菓子たちは,
物語と新しい文化の象徴であるはずなのに,華やかさとはほど遠く最後まで地味なまま.
タイトルの意味は確かに捻りが効いていますが,もう少し見せ場がほしかったところです.
また,最後の編はプロローグにて語られた謎を回収しておしまいとなるわけですが,
これにしても始まり以降は全くの放置で,その唐突さに「そういえば」という程度で,
中途半端なままの主人公とお嬢様の仲や,とある青年の雑な扱いも引っ掛かってしまい,
余韻や続きへの期待というより,最後まで締まらない消化不良の感じだけが強く残ります.
なお,付録(?)に解説もされたお菓子研究家による作中に登場したお菓子のレシピ集,
『風琴屋 皆川真次郎覚え書き 西洋菓子帖』なるものがカラー写真を添えてついています.