ゾンビ漫画である以前に、やはりこのアイアムアヒーローは花沢漫画であることが良く分かる巻だった。
今巻には主人公が自身のアイデンティティーを存分に発揮する中々に燃えるシーンがいくつか登場するが
そのどれもが今一歩決まらずに、読んでいる側をヤキモキとさせる。
この「噛み合わなさ」は、過去の花沢作品で嫌というほど味わってきた氏特有の「苦い旨味」である。
花沢主人公お決まりのリアルな不甲斐なさ、間の悪さといった負の要素は、やはり今作の英雄にも受け継がれている。
そんな駄目駄目な主人公達が、自身の言動や周囲の状況が招いた現実へと懸命に立ち向かい、
あるいは儚く翻弄されていくその姿に、氏の作品の魅力があると私は考える。
それぞれにシチュエーションは違えど、その読み方は変わらない。未曾有のバイオハザードが発生した世界が舞台である今作では、
より切迫したニンゲンの「生」の部分が味わえる。口に合わない人の方が正直圧倒的に多いだろう。
いつまで逃げているのかと展開に不満を覚えもすると思う。だがしかし、この逃避行の中
「自転車二人乗りで女の子にペダルを漕がせている35歳のオッサンの情けないグダグダ感」
これこそをメインと捉えれば、自ずと作者の表現したい事柄が伝わってくるはずである。
この煮え切れなさを過去の自分自身と照らし合わせて、苛々したりテンションを落としたり、基本的にネガティブな気持ちになる。
この「自虐」をしっかりと噛みしめるのが、花沢漫画を楽しむ上で大切な事なのだと、そう思う。
(蛇足)
あれだけ生死を共にしてそれなりの一体感が生まれた所での「彼氏」発言。
仲が深まったと一方的に考えていたこちらにワンパンチを喰らわせてくるあの感じ。なんとまあ生々しい限りである。
氏の女性憎悪を伴ったキャラメイクとストーリーテリングは本当に魅力的だ。まさに「自虐」的な意味で。