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27 人中、23人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
もうひとりの天皇としての貴種・近衛を描いた書,
By 冬野紫 (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: われ巣鴨に出頭せず―近衛文麿と天皇 (単行本)
近衛文麿、名誉回復の評伝。マッカーサーから憲法草案作成への協力まで要請されていた近衛が なぜ一転、戦犯になったのか。 著者はその原因をマルクス主義者の都留重人とH・ノーマンが、 木戸幸一の責任を軽くするため近衛を陥れたとする推論を展開する。 近衛が共産勢力の拡大を危惧する上奏文を提出していたことから、 ソ連の標的とされたのか、ここは実におもしろくつながるが、 推測の域を出ない部分も多く、検証不足という点は否めない。 著者はノーマンの評伝も書いているから、 この点をもっと詰めてほしかったと思う。 新発見の戦略爆撃調査団の尋問書も期待したほどの内容ではない。 ただ、近衛の人間性がよく現れている文書ではあり、 他者を貶め自分を優位に置こうとした形跡などないことから、 近衛がいかに戦後の歴史の中で「弱い近衛」として歪められていったかはよくわかる。 その意味で重要な文書であることには相違ない。 尋問書の発見は今年3月ということなので、 そもそも著者が書きたかったのは、天皇と近衛の関係なのだろう。 近衛自殺後、天皇がいった「近衛は弱いね」の言葉の真意を、 天皇と近衛の特殊な関係性から浮き彫りにすることには成功している。 華族の意味を実感できなくなった現代において、 はっとさせられる視点である。
35 人中、26人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
近衛公擁護論,
By タカ - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: われ巣鴨に出頭せず―近衛文麿と天皇 (単行本)
近衛文麿は仮に自ら命を絶たなかったとしたら東京裁判にかけられていただろうし、現在に至っても近衛の責任については評価は確定されていない。そうした中で本書は、近衛の戦争に至る過程での対応を否定的ではない見方で捉え、戦時中の近衛が如何に終戦に向けて熱心に動いたかを描写している。 日経の人物史に関しては、昨年リリースされた三木武吉の人物史「誠心誠意嘘をつく」で相当がっかりさせられたが、本書は転じておススメである。 公家筆頭の嫡子に生まれ、一般に優柔不断な面が強調されているきらいのある近衛だが、本書ではそうした近衛像とは違った近衛を見て取る事ができると思う。(ただ本書が描写している近衛像の見極めは大切) 最近、東条英機肯定論が出ている。陛下に対して忠臣であった側面は否定しないが、彼が戦前に行なった高圧的な愚策と独り善がりに肯定されるべきものは何らない。 一方、近衛に再評価の余地があるのは確かだ。
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
推奨,
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レビュー対象商品: われ巣鴨に出頭せず―近衛文麿と天皇 (単行本)
「第12 ハーバート・ノーマンと都留重人」には、鳥居民氏の『近衛文麿「黙」して死す』とほぼ同趣旨のことが書かれている。木戸幸一の縁戚筋に当たる都留重人とその友人ノーマンの筋書きにより近衛氏の悲運が決したという見解である。文字通り「黙」したまま従容と死に赴いたという点で、近衛氏は後世の歴史家が描く「意志薄弱な名門貴族」ではなく、強い信念の持ち主であったという結論が導かれている。強い信念の結果がなぜ死を選択することに結び付くのか?なぜ「強い信念」にもとづき、真実を明らかにし、どのような形であれ日本の再建に寄与する途を選択しなかったのか、については説得的な祖述はない。この点を含め、総じて近衛=善玉、木戸=悪玉との印象を与える点がはたして公平な評価といえるのかどうか、大いに疑問が残る。とは言え、ノンフィクション作家としての著者の力量に疑問はない。平成生まれの若者が成人に達し、ますます昭和の記憶が遠のく今日、日本の運命を決定づけた昭和史を改めて検証する作業の重要性を再認識した。
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