「実録・連合赤軍」が静かなるヒットとなっている若松孝二による12年前に発表されたハードボイルド、ストイシズムの薫り高い傑作だ。
全共闘世代として、68年当時活動し、“今”は歌舞伎町で飲み屋の店主をやっている男の、自己のオトシマエを賭けた闘い。原作は、佐々木譲の「真夜中の遠い彼方」。彼が撃つべき対象は、もはや国家権力ではなく、新宿を牛耳る暴力団と香港マフィア。ベトナム人少女の窮地を救った事から、あの時代以降、彼の心の奥底に沈潜していた魂に炎が灯る。多国籍入り乱れる不夜城の闇を切り取ったような血生臭さ大都市新宿の魔界ぶり。麿赤児、吉澤健、佐野史郎らハマりすぎの配役、新宿署のマル暴デカ役の蟹江敬三も含め、この人たち、かって新宿でアングラ芝居をやっていたな。
飲み屋の閉店パーティで、かっての活動家仲間たちが集まってくる。嬉々として教え子たちにかっての武勇伝を語る予備校教師、バンコクでの買春を自慢げに語る広告代理店社員、如才なく事業展開させている不動産屋、ベトナム難民救済運動に力を注ぐ事であの時代との接点を持ち続けようとする都議員、定職につかず新聞配達で生計を立てる巨人ファンの男、そして、主人公のかっての同志で恋人だった編集者。あの時代をどう総括し、どうオトシマエをつけたのか?若気の至りとばかりに社会人として成功する者、拘り続けて取り残される者、いかにも、と思えるそのコントラストの描写が見事だ。
原田芳雄と桃井かおり、新劇出身ながら、70年代より映画の世界で、その不良性とアウトロー的な生き様を見せてくれた二人が、若松の思い入れ過多のまま躍動する。
エンドロールで、10.21新宿騒乱のニュースフィルムが延々と流れる。これは、撮影監督宮島義勇による新左翼運動史を綴った「怒りをうたえ」からの引用。鴻上尚史の舞台「僕たちの好きだった革命」でも使用されていた。
若松としては珍しいアクション映画。DVD化はされないのだろうか?