伝説の「フォークの神様」と呼ばれた岡林信康のデビューアルバムです。岡林はこのアルバムにより1970年前後の関西フォークにおいて、多くのファンを獲得し、完全に神格化されていました。
今振りかえって考えてみますと『わたしを断罪せよ』というアルバムタイトルは大変意味深だと思います。牧師の息子として生まれ、同志社大学神学部中退したキャリアだけでなく、「フォーク界におけるヒーロー」という虚像に対する自分の存在そのものへの批判も込められているわけです。
大学生活から山谷のドヤ街へドロップアウトした実体験から生まれた「山谷ブルース」を聴いていると、岡林の境遇と実生活のジレンマを感じます。その強烈なメッセージは世間に対して発せられましたが、同時に岡林の心の中へも深く入っていったことだと思います。
このCDに収録されている「手紙」やその後に発表された「チューリップのアップリケ」のような社会問題への提起は、当時の世相と密接に関係していました。1969年当時の大学生は社会の矛盾と向き合わねばいけないと、各人が思い悩んでいた時代でした。だから「手紙」のような名作が生まれたわけですし、若者の圧倒的な支持があったわけです。
「手紙」もすぐに放送禁止となり、岡林自身がフォークシーンからもドロップアウトするのですが、その理由は『わたしを断罪せよ』というタイトルに行き当たると思います。
ラストに収録されている♪友よ 夜明けまえの闇の中で 友よ 斗いの炎をもやせ♪という岡林のシンプルでストレートな歌唱を聴くたびにあの時代の若者の持つエネルギーの象徴がこのアルバムに集約されていると感じます。
「友よ」は70年安保に端を発した学生運動の連帯感を支えた歌だったといえるでしょう。