作者の他作『あまりにも騒がしい孤独』がおもしろかったので、読んでみました。床を覆うお札、天井いっぱいの風船、女性の裸体を飾る花々、ホールできらめく三百組の黄金のナイフとフォーク。こんな想像力をかき立てる視覚的な描写が大好きです。
作者の祖国チェコは、ドイツに占領された歴史を持ちます。占領下では多くのチェコ人が苦難を被りました。だからドイツ人を描く際に悪意が混じってもおかしくないのですが、フラバルの筆致から読みとれるのは民族主義に捕らわれない正義です。その一例が主人公とリーサの出会いでしょう。同胞の嫌がらせからリーザを守ったことで、二人は知り合うのです。主人公はこの時民族主義団体に所属していたことになっています。それでも何の咎もない人が乱暴されるのは許せなかった。これは当時のチェコ人が犯したドイツ人への暴力への批判です。私はこの点につよく感心しました。