妻である詩人・牧洋子との関係が複雑であった開高は、自分に心酔する担当編集者であった著者を買い物・衣類リフォームなどでお手伝い的に使うだけでなく、秘密口座を管理させて、愛人らしき人物への送金役などもさせていたらしい。
とはいえ、本書はけっして暴露ものではない。開高健の小説に出会って文学の力に目覚め、偶然の縁によって担当編集者となり、最初の開高健特集雑誌(面白半分増刊『これぞ、開高健。』)編集に腕を振るう機会に恵まれた著者ならではの、愛情にあふれたオマージュ本である。
と同時に、学生運動体験をくぐり、不器用な生き方しかできず、開高からそのナイナイズクシぶりをからかわれながらも愛された「律儀さと真摯さ」だけを頼りに、開高の傍を離れてからも彼に薫陶を受けたワインへの情熱に導かれて、パリ在住のワインライターとして生きて来た著者の誠実な人生の記録でもある。開高ファン以外にもお薦め。