追いかけると逃げて行くのに、じっとしてると寄って来て、一緒にいてくれる動物たち。マリー・ホール・エッツが描く、この嬉しい世界は、じつはフィールドにおける真実なのです。
屋外で動物を観察するなら、まずじっと待つことを憶えなければなりません。棲息地に行けばすぐに動物たちが姿をあらわし、真実の姿を見せてくれる、そんなことはありえないんです。海辺でイソギンチャクやシオマネキ、ヤドカリなど、ごく小さな、単純な生き物を観察する場合ですら、観察者は何分も息を凝らして岩と化し、生物が動き始めるのを待たなければならないもの。
童話など、子供向けの物語では、平凡な作家がこうした真実を無視して、あるいは無知をさらけだして、都合よく動物たちを動かすことが多いようです。しかしエッツは豊富な自然体験からか、実にリアルに生物の動きを描き出しています。まず小さな生き物から、それからしだいに大きな動物が、じっとしているわたしを恐がるのをやめて、好きなことをするようになるのです。
待つ面倒くささと、動きだすのを見る喜び。これは生物を扱うものにとっては原体験のようなものですが、正面から扱った物語はほとんど見たことがありません。童話では他に皆無でしょう。
一定のリアリティー、シンプルできれいな画、嬉しい展開。物語としての展開が少し弱いきらいはありますが、その分テーマがはっきりしていて、ぼくはこの作品も作者も気に入りました。