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33 人中、29人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
喪失感と希望,
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レビュー対象商品: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) (単行本)
「日の名残り」にしても本書にしても、イシグロの作品を読むと、「喪失感」という言葉が浮かんできます。私達は生きている間にいろいろなものを失っていく。時にはかけがえのない大切なものを、自分がそうとは知らぬ間になくしていき、後から振り返ってそれに気づくのだが、そのときはもう全てが終わっている。本書を読むとそんなメッセージが伝わるように思います。物語の前半は比較的ゆっくりと登場人物のあり方が描かれているのに対して、後半は下手すると荒唐無稽な展開が繰り広げられ、驚きと不安を読者に持たせ、一気に切ない大団円を迎えます。 喪失そのものは哀しく切ないのですが、しかし読後感は決して悲愴感だけではありません。失うことを現実としてあるがまま受け入れ、はじめてそこから何かが始められる、そんなそこはかとない希望を持たせてくれる、素敵な小説でした。
15 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
独白の恣意的な歪みを,
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レビュー対象商品: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) (単行本)
「英国」作家カズオ・イシグロ五番目の長編である。今までのイシグロの作品と同じく、語り手の独白に近い「語り」により ストーリーが淡々と語られていく。 しかし気を付けなければならない点は、 語り手の恣意によって歪められ、都合の良いように隠匿される。 つまりイシグロの小説世界は寄る辺無い世界なのだ。 本書の舞台は上海租界。 中国大陸にありながら、中国でも欧米でもない魔都を舞台に選んだということは
25 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
傑作と呼ぶには何かが足りない。,
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レビュー対象商品: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫) (文庫)
本書の主人公バンクスは、上海育ちの英国人であり、彼が10歳の時に両親が相次いで失踪した結果、 英国に送られて教育を受けたという、かすかにイシグロ本人の 経歴を思わせるような人物設定になっている。 内容のほうも、これまでの純文学路線とは違い、 探偵小説のパロディめいたエンタメ寄りのもので、 前半では、上海での少年時代の回想を差し挟みつつ、 バンクスが英国のスノビッシュな社交界の中で、 探偵としての名声を築いていく過程が描かれ、 後半はいよいよ、第二次上海事変から日中全面戦争へと至る 渦中の「魔都」上海へと、バンクスが乗り込むことになる。 こう書くと、傑作たることはほとんど約束されているようにも思えるが、 読み終わって、そう呼ぶには何かが欠けていると感じた。 ひとつには、バンクスの養女となる孤児のジェニファーが、 物語の流れにうまく組み込まれていないように思えることが 挙げられるかもしれない。彼女が登場する場面は、主要な筋からは 半ば独立しているため、単に孤児をもうひとり登場させる必要上、 都合よく導入された人物ではないかという気がしてしまうのだ。 また、舞台が上海に移った途端、急速に現実感が乏しくなり なぜか皆がバンクス一人に事態の解決を要求するという、 「セカイ系」の展開に突入していくのだが、ここでの上海の描き方が むしろ類型的なものに留められていることにも、 (イシグロ本人によれば意図的なものらしいが) 微妙な物足りなさを覚えた。名探偵であるはずのバンクスが、 現実にはあり得ない仮定を信じ込むに至る経緯が、 いささか簡単に描かれ過ぎているようでもあるし、 結末近くで明かされる真相の重さとも、 もうひとつうまく釣り合っていないような気がする。 最後に、これは翻訳の問題になるが、 原文でアキラが話す英語は、be動詞や3単現のsが ほぼ完全に省略された舌足らずのものであり、 邦訳はそこを流暢に訳し過ぎていると思う。
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