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わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)
 
 

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) [単行本]

カズオ イシグロ , Kazuo Ishiguro , 入江 真佐子
5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (43件のカスタマーレビュー)

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商品の説明

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アヘン取り引きに絡んでいたイギリス人ビジネスマンの父親が上海の自宅から突然姿を消したとき、9歳のクリストファー・バンクスは友だちのアキラと探偵ごっこに夢中だった。「中国人街のうさぎ小屋のような路地で追いかけっこや殴り合い、撃ち合いをしたあと、詳細は違っていても決まって必ず、ジェスフィールド公園での壮大な儀式で探偵ごっこは締めくくられた。その儀式で僕たちは、一段高くなった特別ステージにひとりずつ上り…拍手喝采を送る群衆に向かって挨拶するのだった」
次いで母親までもが行方不明となったクリストファーは、イギリスへ送られることになる。2つの世界大戦に挟まれた時代を彼はそこで過ごし、やがて「自称」有名な探偵になる。しかし家族を襲った運命が彼の頭から離れることはなかった。クリストファーは懸命に記憶をたどり、両親の失踪に何らかの意味を見出そうとする。そして1930年代末、彼はついに上海に戻り、自分の人生において最も重要な事件の解決に乗り出すのだった。しかし調査を進めるにつれ、現実と幻想との境界線は次第にあいまいになっていく。彼の出会った日本兵は本当にアキラなのか。両親は本当に中国人街のどこかに監禁されているのか。そして、何か重要な祝典を計画しているらしいグレイソンというイギリス人の役人はいったい何者なのか。「まず何よりも先にお聞きしたいのはですね、儀式の会場をジェスフィールド公園にすることでよろしいかということです。なにしろ、かなり大きなスペースが必要となりますのでね」
『When We Were Orphans』でカズオ・イシグロは、犯罪小説の伝統的な手法を用いて、少年時代のトラウマが落とす影から逃れられないでいる困惑した男の心情を感動的に描き出している。シャーロック・ホームズは推理の際、泥のついた靴や袖についた煙草の灰といった断片的な証拠で事足りた。しかしクリストファーに残されたのは消えゆく遠い昔の記憶だけ。彼にとって、真実はもっとずっと捕らえ難いものだった。小説は一人称で書かれているが、クリストファーの慎重に抑制された語りには冒頭からほころびが見られ、彼を通して見る世界が必ずしも信頼できないことを暗示する。そのため読者は、自らもまた探偵になることを迫られ、クリストファーの記憶の迷路を真実のかけらを求めてさまようのである。
イシグロはもともと派手な弁舌に走る作家ではない。しかし、この作品に漂うもの静かなトーンは、かえって強く感情を揺さぶってくる。『When We Were Orphans』は見事なまでにコントロールされた想像力の傑作である。そしてクリストファー・バンクスは、著者の創造した人物のなかでも、最も印象的なキャラクターのひとりと言えるだろう。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

Synopsis

In 1930s England, Christopher Banks has become one of the country's most celebrated detectives. His cases are the talk of London society. Yet one mystery has always haunted him, the mysterious disappearance of his parents in Old Shanghai, when he was a small boy. --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

登録情報

  • 単行本: 414ページ
  • 出版社: 早川書房 (2001/04)
  • ISBN-10: 4152083425
  • ISBN-13: 978-4152083425
  • 発売日: 2001/04
  • 商品の寸法: 19.5 x 14 x 3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (43件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 321,483位 (本のベストセラーを見る)
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書き出し
IT WAS THE SUMMER of 1923, the summer I came down from Cambridge, when despite my aunt's wishes that I return to Shropshire, I decided my future lay in the capital and took up a small flat at Number 14b Bedford Gardens in Kensington. 最初のページを読む
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33 人中、29人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 喪失感と希望, 2004/7/31
By 
benkeiu (東京都) - レビューをすべて見る
(VINEメンバー)   
レビュー対象商品: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) (単行本)
「日の名残り」にしても本書にしても、イシグロの作品を読むと、「喪失感」という言葉が浮かんできます。私達は生きている間にいろいろなものを失っていく。時にはかけがえのない大切なものを、自分がそうとは知らぬ間になくしていき、後から振り返ってそれに気づくのだが、そのときはもう全てが終わっている。本書を読むとそんなメッセージが伝わるように思います。

物語の前半は比較的ゆっくりと登場人物のあり方が描かれているのに対して、後半は下手すると荒唐無稽な展開が繰り広げられ、驚きと不安を読者に持たせ、一気に切ない大団円を迎えます。

喪失そのものは哀しく切ないのですが、しかし読後感は決して悲愴感だけではありません。失うことを現実としてあるがまま受け入れ、はじめてそこから何かが始められる、そんなそこはかとない希望を持たせてくれる、素敵な小説でした。

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15 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 独白の恣意的な歪みを, 2003/12/14
By 
アジアの息吹 - レビューをすべて見る
(トップ1000レビュアー)   
レビュー対象商品: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) (単行本)
「英国」作家カズオ・イシグロ五番目の長編である。
今までのイシグロの作品と同じく、語り手の独白に近い「語り」により
ストーリーが淡々と語られていく。

しかし気を付けなければならない点は、
イシグロの語り手は決して真実を語っていないということだ。
起きたこと、台詞、そして語り手の心情でさえも

語り手の恣意によって歪められ、都合の良いように隠匿される。

つまりイシグロの小説世界は寄る辺無い世界なのだ。
足許が安定していないだけに、読み手の位置も、
他の登場人物との距離感も判然とはしない。
普通の小説に慣れた感覚で読み進めると、かなり気分の悪い思いをするはずだ。

本書の舞台は上海租界。

中国大陸にありながら、中国でも欧米でもない魔都を舞台に選んだということは
ありきたりではあるが、そのイシグロの小説に流れる浮遊感覚
を表現するには最適な舞台なのだろう。

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25 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 傑作と呼ぶには何かが足りない。, 2007/9/15
By 
デルスー (沿海州シホテアリニ山脈) - レビューをすべて見る
(VINEメンバー)    (トップ1000レビュアー)   
本書の主人公バンクスは、上海育ちの英国人であり、
彼が10歳の時に両親が相次いで失踪した結果、
英国に送られて教育を受けたという、かすかにイシグロ本人の
経歴を思わせるような人物設定になっている。

内容のほうも、これまでの純文学路線とは違い、
探偵小説のパロディめいたエンタメ寄りのもので、
前半では、上海での少年時代の回想を差し挟みつつ、
バンクスが英国のスノビッシュな社交界の中で、
探偵としての名声を築いていく過程が描かれ、
後半はいよいよ、第二次上海事変から日中全面戦争へと至る
渦中の「魔都」上海へと、バンクスが乗り込むことになる。

こう書くと、傑作たることはほとんど約束されているようにも思えるが、
読み終わって、そう呼ぶには何かが欠けていると感じた。
ひとつには、バンクスの養女となる孤児のジェニファーが、
物語の流れにうまく組み込まれていないように思えることが
挙げられるかもしれない。彼女が登場する場面は、主要な筋からは
半ば独立しているため、単に孤児をもうひとり登場させる必要上、
都合よく導入された人物ではないかという気がしてしまうのだ。

また、舞台が上海に移った途端、急速に現実感が乏しくなり
なぜか皆がバンクス一人に事態の解決を要求するという、
「セカイ系」の展開に突入していくのだが、ここでの上海の描き方が
むしろ類型的なものに留められていることにも、
(イシグロ本人によれば意図的なものらしいが)
微妙な物足りなさを覚えた。名探偵であるはずのバンクスが、
現実にはあり得ない仮定を信じ込むに至る経緯が、
いささか簡単に描かれ過ぎているようでもあるし、
結末近くで明かされる真相の重さとも、
もうひとつうまく釣り合っていないような気がする。

最後に、これは翻訳の問題になるが、
原文でアキラが話す英語は、be動詞や3単現のsが
ほぼ完全に省略された舌足らずのものであり、
邦訳はそこを流暢に訳し過ぎていると思う。
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