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わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)
 
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わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫) [文庫]

川上 未映子
5つ星のうち 3.6  レビューをすべて見る (14件のカスタマーレビュー)
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o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o
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商品の説明

内容説明

言葉の応酬と問いの炸裂。衝撃の処女小説!〈わたし〉と〈私〉と〈歯〉をめぐる、疾風怒濤のなんやかや!芥川賞候補となり、文学界に賞賛を巻き起こしたデビュー作。読んだら吐くで、そいでもって泣くで。

内容(「BOOK」データベースより)

人はいったい体のどこで考えているのか。それは脳、ではなく歯―人並みはずれて健康な奥歯、であると決めた“わたし”は、歯科助手に転職し、恋人の青木を想い、まだ見ぬ我が子にむけ日記を綴る。哲学的テーマをリズミカルな独創的文体で描き、芥川賞候補となった表題作ほか一編を収録。著者初の小説集。

登録情報

  • 文庫: 144ページ
  • 出版社: 講談社 (2010/7/15)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4062767104
  • ISBN-13: 978-4062767101
  • 発売日: 2010/7/15
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.4 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.6  レビューをすべて見る (14件のカスタマーレビュー)
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29 人中、24人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 新しい日本文学の曙光, 2009/1/4
 歯科助手として働く語り手が、わたしとは奥歯であるという信念(というほどでもないが)のもと、青木なる恋人にせっせと恋文を書いたり、未来の子供に「お母さんは」と言って手紙を書いたりしながら、大阪弁の地の文で怒涛の展開を見せるという小説。言葉のスピード感は、芥川賞選評で山田詠美が言っていたように、面白いものがあり、個人的にはネタばれしている『アサッテの人』よりも小説として面白く読んだ。とくに、喧嘩したら、奥歯(つまり「わたくし」)を見せ合って、それで仲直りするという約束というか物語を作る、というモチーフをもっと掘り下げていければ面白かったように思う。

 残念なことに、小説は、語り手の青木に対する思いが一方的な妄想であり、それが青木ととくにその恋人の強烈なミナミ訛りの大阪弁によって暴露されていくという展開をとる。小説の主題は、そこでいじめとその苦痛というテーマになり、語り手は幼少期からずっといじめられ(歯科医院でもいじめられている)、中学で青木に『雪国』の「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」には主語がないという言葉に感動して、苦痛を超越した主体のない(「わたしく率ゼロの」)境地を目指すことを気づくのだが、奥歯が「わたし」だというのも、語り手は虫歯になったことがなく、歯痛というものを経験したことがないので、唯一苦痛を感じない奥歯を「わたし」とし、そこに苦痛を集めることで、苦痛を耐え忍ぶためだったのである。

 この苦痛を集めた奥歯は抜かれる。小説はこうして西田幾多郎的純粋経験の世界を志向して終わってしまう。このエンディングはある意味ネタばれしていて、この小説の言葉の力を縮減しているが、さらに最後にでてくる「無歯症」(永久歯が生えない病気)かもしれない子供のエピソードが、「わたし」の欠如した、つまりは痛みを感じる主体を書いた世代の登場を微妙に予言しているようで、この純粋経験への言及を相対化しているようにも見える。つまり「わたくし率ゼロ」で奥歯のない存在が、この作者によって肯定されているのか否定されているのかは宙づりになっているのだ。

 川上未映子は興味深い作家である。もうすこし思想的な深化をみせ、モチーフを丁寧に展開する技量をみがけば、彼女のもっている言葉の力は充実した作品となって結実するように思われる。いずれにしても新しい日本文学の曙光を感じさせる作家である。
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136 人中、93人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0 この手に何度も乗るほど「暇やないねんて」ってのも一方ではあるけど, 2007/8/20
 脳でも子宮でもなく奥歯が書いた私(わたくし)小説。もうこの設定自体、許せない人には許せないだろう。俺にしたって、タイトルはちょっとヤバイと思ったけど、ロリっぽい著者近影と意外に30越えの年齢のギャップに「ほしのあき?」的な関心で手に取ったわけで。
 内容はと言えば、もう、わたしわたしわたしの脳天パラダイス状態。大阪弁がまた、言葉から理性を奪い去る。もう、この言葉の羅列には、理性も客観も物語もコミュニケーションも何ひとつなくて、あるのは肥大した「わたし」だけ。日付の前後する日記とかはちょっと吉田戦車風で、そこら辺の稚拙な作為が見え隠れするのが何だけど、まあ、よく引っ張るよなぁ。まあ、勘違いして手に取った人も普通は2〜3ページで放棄するんだろうけど、読み始めたらとりあえず最後まで読む貧乏性で律儀な俺としたら、いつご褒美がもらえるのか、サービスシーンがあるのか、って望み薄でも期待しちゃう訳だ。そんな勝手な罠にはまって読み進めると、そこにあるのはノイジーな、救いのない、気のふれた、不快な、目を覆う、自己完結の、退屈な、鬱陶しい、ノーサービスのわたしわたしわたし、なんだけど。
  「わたしわたしうるさいねん。奥歯とか雪とかさっきから何をゆうとんねん。いっこもなんも意味わかってへんからこっち百パー意味わかってへんから。ってゆうか、あんたおかしいやろ?」「っていうかまず人に話するときの努力をしろよ。おまえよ。間違ってるやろがそもそもが。みんな忙しいねん」っていう、やっとまともに文脈の通じる「わたし」以外の言葉が登場して、この小説の構造自体が相対化されるんだけど、ここの部分はカタルシスっていうか、逆にここまでの「わたし」語りの異物感を際立たせもする。言葉とか私とか意味とか文学とか、考えさせられる。まぁ、この手に何度も乗るほど「暇やないねんて」ってのも一方ではあるけど。
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8 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 お口の中と世界の結婚, 2008/3/30
そこに存在する人の、他の誰とも代わり得ない「たったひとつのそこにある視力」。作中、この「視力」は「痛み」と並んで、私はどこまでも私、という自同律の象徴。人の顔は毎日露出しているから大事な所が薄れるのかも、という語り手の疑惑は、奥歯への執着に導かれる。普段は眼差しから隠されているが、口を開け、鏡に映して自分で見るなり、他人に見せるなり出来る、奥歯。彼女が歯科の前に化粧品売り場で働いていた話は、女性性という角度から、他者の「視力」と存在認知の関係を匂わせるし、カタストロフ的場面で彼女が、自らは無頓着でいた容姿を「ブス」と批難される必然性にも繋がる。
歯は、開いた口から現れるという点で、言語を連想するし、呑み込む器官、口は、世界と他人を呑み込む点で、自意識に似ている。冒頭での語り手と歯科医の遣り取りは、自意識の奥の言語を取り出して治療する、精神分析のよう。作中、歯が「印象」と呼ばれる型でコピーされる存在である事が語られるのも、実は歯すら確固とした<私>の所在地たり得ない、表層に過ぎない事を暗示しているように感じる。だが、一人称の、わたくし率100%で突っ走った表題作が、三人称へ、つまり主語を持たぬ語りへ移る場面は、歯の「無い」を浮かび上がらせる「印象」も、オリジナルたる歯が最初から不在ならば単なる無でしかあり得ない不安をも示している。
『雪国』冒頭の文章には主語が無い、という話や、その事態を表す「純粋経験」という言葉は、永井均『西田幾多郎 <絶対無>とは何か』が念頭にあった筈。

真っ赤な表紙が挟む白いページが、歯茎の間の歯のように見える装丁は、紙のツルツル感と光沢も手伝って、本が入れ歯に見え、幻覚的。白いカバーが少し小さめで、赤い表紙をチラ見せしていたり、ミニマルだが細かい演出が利いている。
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