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少女が少女のために書いた『わすれなぐさ』は、中原淳一のオリジナル装丁を可能なかぎり再現し、本文を新字・現代かな遣いに改め、詳細な注をつけた、読みやすい美しい本。監修者嶽本野ばらの注はそれだけで一つの作品に近く、この厚みのある注釈を読んでいると、本文の信子世界とは違う、野ばら世界に入っていってしまうので、注がなくても本文が理解できれば、最初に読んでしまうか後で味わうかしたほうがいいかもしれない。なにしろ、注がなくてもたいてい理解できるほど、本文は読みやすく、美しく、ストーリー構成などが天然もののの巧みさで、ぐいぐい引っ張られる。
『今日離れ来し、あの海辺の雨の銀鼠の煙る中を、ただひとり先生に送られての出立、―そして幾日かの水泳宿舎での生活、赤旗を越えた事件―西瓜をゆでた事件、電報の来た刹那の気持―それからそれへ、もうそれは幾年もの前のなつかしい出来事の絵巻物の如く思い浮ぶのだった。』
過度に道徳的でもなく不良でもないリアルな少女の日常は、生きているというだけでもう、事件だらけだ。ストーリーには当時流行のモダーンな風物がさまざまに盛り込まれ、華やかにまたメランコリックに大正浪漫に浸れる一冊。
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