ここ10数年ほどのアジア、特にインドの変化は目を見張るものがあります。
アジア方面が好きでよく旅する人には数年ぶりに訪れてみると前と全く変わってしまったと驚いた経験をした方も多いはず。
インドにいたっては、もはや数年前発行の旅行書の情報などは全く当てにならず都会では若者は皆ジーンズ姿で携帯電話という旅行者のイメージする埃たつごちゃごちゃした通りにリキシャ、サリーに牛といった風景はどんどん消えつつあります。
もちろんそんなノスタルジーは旅行者の勝手な言い分でかつて日本もそうだったようにそこに暮らしている人々にとってはこういった発展や変化はいいことには違いないのですが反面大事な物が失われて行くのも事実でその意味でこの本は将来的には大変貴重な記録となるのではないかと思います。
もともとはインドの奥地、先住民の家々の壁に描かれていたという絵をきっかけに作者、蔵前仁一さんと奥様はその壁に描かれた絵を見る目的で旅に出ます。
どんどん奥地にわけいりながら少数民族による民芸品アートを中心にそこで見たもの、出会ったもの、出会った人々を美しい写真入りで紹介しています。
それが最近の旅で2009年一月、今年の事なので(旅から出版まで作者の行動力に驚かされます。)非常にタイムリーに今のインドを伝えています。
観光地以外は情報の少ないインドの旅故に興味深くおもしろく読ませていただきました。
今のところ変化は裕福なお金持ち層中心でまずしい人々の暮らしは全く変えようがないといった現状にみえますがこの本を読むとやはり徐々に何もかもが変わっていくのは致し方ないように思えます。
まず奥地の方までハイウェイが通り、人々がどんどん行き来するようになり宗教的意味合いをもった壁画が描かれなくなり海外から訪れる人々に売る目的の為、紙の上に描かれるようになった現状。
壁の絵は消えつつありその最後の灯火とも言うべき物を本書は記録しているような気がしました。
アディヴァシーというインドの先住民についてもこの本を読んで初めて知りました。
ミラーワークなどで有名なカッチ地方の少数民族は有名ですが日本でインドのこういった歴史的バックグラウンドを知る人はあまりいないのではないかと思います。
ヨーロッパに流れていったジプシーのルーツにもつながるようで歴史的に見ても非常に興味深い内容でした。