昭和三十年代の昔なつかしい日本の風物を舞台背景に、鈴音(りんね)と和歌子の上条(かみじょう)姉妹が事件を解決していく連作短篇集。『わくらば日記』に続く第2弾の本書は、鈴音と同じく、人や物の記憶を見る力を持った人物、薔薇姫こと御堂吹雪(みどう ふぶき)の登場がひとつ、大きなアクセントになっています。
白鳥のように清楚で可憐な鈴音のキャラに対して、黒鷲(実際にはいない鳥ですが)のごとく禍々しいオーラを放つ吹雪。善と悪、光と翳(かげ)ともいうべき対照的なふたりが出会うことで生じる不協和音のきしみ、不穏な空気。その雰囲気が、物語にスリリングな緊張感を生み出していた第一話「澱(よど)みに光るもの」が、まず、印象鮮やかな作品。物語に大いなる転調効果を及ぼす新キャラ、吹雪の登場に、強いインパクトを受けました。
この冒頭の一篇に続く四つの短篇、そのすべてに吹雪が絡んでくるのかと思いきや、その予想は大はずれ。出だしの吹雪の登場が鮮烈だっただけに、その後、某短篇を除いて出番がなかったのは、とても残念でしたね。吹雪の不吉な翳が濃くなるほどに、鈴音と和歌子の姉妹の光がより強く、より鮮やかに輝く気がします。シリーズの今後の吹雪の活躍に、大いに期待したいです。