昭和30年代のまだ貧しかった日本を舞台にした、二人の姉妹が主人公の5つの短編集だ。妹の和歌子には、美人だが体の弱い姉がいて、人や物を見ると、その人や物の周りで過去に起こった出来事を遡ってみることができる不思議な能力を持っている。
この不思議な能力により、この二人は普通では経験できない、忌まわしい事件に関わったり人間の心の内側を覗くことになる。5つの短編には異なるエピソードが描かれているが、何れも人間の善意・優しさと、現実の厳しさや残酷さが描かれていて、暖かくそして少し哀しい気持ちになる。
常に別れの予感を感じさせる本書は読んでいてちょっと辛い部分もあるが、最後のシーンにあるように、美しいものが現実には過ぎ去ってしまっても、一人ひとりの心の中ではきっとその人が生き続ける限りは永遠なのだろう、だからこそ今を大切に生きるしかないのだろう、と思った。
なお、タイトルの「わくらば」というのは耳慣れない言葉なので辞書で調べてみたところ、漢字では「病葉または嫩葉」と書いて、「病気におかされた葉」と「木の若葉」の二つの意味があるそうだ。