まず感動したのが本DVDのPart2、1990年4月〜5月にかけて収録された『わが祖国』のリハーサル風景。全部で53分ほどのドキュメントの端々から、この曲を深いところで理解し、敬愛している指揮者クーベリックの思いがひしひしと伝わってきて、本当に素晴らしかった。なかでも、第1曲「ヴィシェフラト(高い城)」の旋律を逆さまにすることで、高い城の崩壊を暗示したのが第3曲「シャールカ」だとする解釈は、目から鱗でした。
さらに、1948年にチェコを後にして以来、実に42年ぶりの祖国への帰郷となるクーベリックが、「私は断固、共産主義の強制的な政治体制に反対する。人々が暮らしやすい生活を送るためになら命をかけるが、良心を裏切る道に踏み出す行為だけは、絶対にとりたくない」と自らの信念を語る場面には、胸がじんと熱くなりました。
そして、Part1のライヴ収録、1990年5月12日の「プラハの春」のオープニング・コンサートから、スメタナの連作交響詩『わが祖国』全6曲の演奏の素晴らしかったこと!
リハーサル風景でも触れられていた第2曲「モルダウ」の【聖ヨハネの急流】の辺りから躍動感、生命感がみなぎってきて、第3曲「シャールカ」は絶品。第4曲「ボヘミアの野と森から」の気宇壮大、ゆったりとして柄の大きな演奏を経て、第5曲「ターボル」〜第6曲「ブラニーク」へと曲が続いていくところ。エネルギッシュな力強さと、万感の思いのこもったあたたかさとが、絶妙のバランスで融け合っていて、心を激しく揺さぶられました。胸がいっぱいになりました。
この曲の演奏では、ボストン交響楽団を振っての名演奏が忘れがたいラファエル・クーベリック(1914-1996)。「プラハの春」第1回の音楽祭(1946年)でチェコ・フィルを指揮したクーベリックの、何と44年ぶりの登場となるコンサート&リハーサル風景を撮ったこのDVDは、これからも折に触れて鑑賞していきたい、かけがえのない宝物になりました。
ひとりでも多くのクラシック音楽ファンに、この熱演を味わっていただきたい。そう願ってやみません。