あくまでも架空の話ですが,それはそれとして独裁者ヒトラーを笑い飛ばすことができる映画です。
既にドイツの敗色が濃く,演説もうまくできなくなっていたヒトラーは,1945年1月1日に群衆の前で演説をするにあたって,演説の技法について個人レッスンを受けることになります。宣伝相ゲッペルスが教師役に選んだのが,強制収容所にいたユダヤ人グリュンバウム教授です。グリュンバウム教授は,ヒトラーと同じアドルフという名前です。
かくしてグリュンバウムは突然ベルリンに呼び出され,戸惑いながらも教師役を引き受けるのですが,グリュンバウムには別の意図がありました。他方で,ゲッペルスにはまた別の隠れた意図もありました。
ところが,演説や演技の指導を通じて,2人のアドルフは心を通わすようになります。そして,演説の当日,ヒトラーにもグリュンバウムにも,ゲッペルスにさえも全く予想外のことが起きて・・・
ブルーノ・ガンツの「最後の12日間」どころではなく,ヒトラーを完全に人間として,しかも一人の弱い人間として描いています。
原題はMein Fuehrerとなっており,「わが指導者」(ヒトラーからみたグリュンバウム)というニュアンスになっています。他方で,Fuehrerはもちろん「総統」という意味もあります。日本語のタイトルでは,原題のニュアンスが十分に伝わらないのが残念です。
この作品は「善き人のためのソナタ」で熱演したウーリッヒ・ミューエの遺作となった作品です。本作でもとてもいい演技を見せています。