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18 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 2.0
マルケスは好きだけど…,
By ファビュラスワイルドキャット (東京) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: わが悲しき娼婦たちの思い出 (Obra de Garc〓a M〓rquez (2004)) (単行本)
マルケスの最新作、しかも川端作品に想を得ての作品という予告記事をずいぶん前に新聞で読み、それからずいぶん待ち焦がれてやっと読んだせいもあってか、期待はずれの感が強かった。マルケス独特のユーモアや軽妙さは健在だが、やはり過去の名作の数々と比べて質・量ともにどうしても見劣りがしてしまった。決定的に違和感を覚えたのは、90歳の老人という語り手の設定。誕生日のお祝いに処女とみだらに過ごしたいという願望があってもかまわない。その少女に恋をしてしまうのも別に問題はない。でもその思考回路と行動力があまりに能天気すぎて、どう読んでも90歳のリアリティがない。タイトルの「悲しき」が「娼婦」にかかるのか「思い出」にかかるのかわからないけど、いずれにしても「悲しみ」は伝わってこない。余計な感傷も乾いてしまうという意味でそれが90歳のリアリティなのだろうか…。そんなの文学で読みたいと思わないし。 「百年の孤独」などの名作には、突拍子もないストーリーの数々にも確かなリアリティがあった。それがマジックリアリズムと呼ばれる所以なのだろう。そのリアリティの欠如ゆえに、この作品にはストーリーテリングのわくわくする面白さが感じられない。 文章や構成もやや雑な感じで、たとえば「予告された殺人の記録」などの緊密な構成と濃厚で磨きぬかれた文章には比べるべくもない。さらに比べる必要はないながら、少女と対峙する老人の心理を通して生と死の構図を陰影豊かに描き出した川端の「眠れる美女」には到底及ぶべくもないと感じた。 ファンとしてあえて言わしてもらえば、これはマルケス作品の中でも駄作の部類だと思う。手に取りやすい分量と目を引くタイトルや書き出しにつられてマルケス入門として読もうと思う人がいたら、まったくおすすめできません。
23 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
歳を重ねることで得られるもの,
By Jabb (日本) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: わが悲しき娼婦たちの思い出 (Obra de Garc〓a M〓rquez (2004)) (単行本)
手に取ったきっかけは、日経新聞に掲載されていた書評でした。川端康成の『眠れる美女』の引用が冒頭にあると知り、手に取るに至りました。『眠れる美女』は、昔読んだときに理解できず、大人になったら再読しようとしまい込んでいた作品です。あのテイストを踏襲している作品を、現時点で読んでみたいと思ったのです。川端康成の一節から続く、「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた」の書き出しを読んで、老人の処女礼賛をテーマにした作品なのかと思いました。しかし実際には、ヘルマン・ヘッセの『人は成熟するにつれて若くなる』を想起しました。 処女の横で眠るだけの夜を過ごしながら、九十歳の老人が精神的に自由になっていきます。「セックスというのは、愛が不足しているときに慰めになるだけ」という台詞もあり、数々の娼婦と寝つつ、九十歳にして愛を知ったことで肉体的にも自由になったとも読めます。 作品では、頻繁に「九十歳」という外側から判断した年齢が強調されます。性においても、仕事においても、「あの年齢で・・」と言われる老人扱いです。しかし、外側にいる人たちが見做す「老い」と、自らが実感する「歳」は違います。「歳」には無限の可能性があり、歳を重ねることで得られるモノがある、そんな風に感じる作品でした。
6 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
微笑ましい喜劇,
By バフチノ (日本) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: わが悲しき娼婦たちの思い出 (Obra de Garc〓a M〓rquez (2004)) (単行本)
「満90歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた」というすさまじい書き出しから始まる。最後の訳者のあとがきを見ていると「老人の純愛」物語として捉えられているように見えるが、むしろ読後感は喜劇だった。 相手の処女というのも孤児で売春宿で働かされている子なのだが、途中で90歳の老人がその子のことを指して「これじゃ売春婦じゃないか!」といって暴れまわるシーンがある。この科白で、この老人の「愛」の滑稽さ、喜劇性を完璧に表しているように感じた。 この本はそもそもこの老人が書き手の手記という体裁なので、本人は滑稽と思わずに書いているはずで、周りが見えていない。 つまり、この老人はその行為、自分の妄想を「愛」と感じている。そして、妄想は大噴火する。 本人も本気で、それがまた笑えてしまう。 但し、喜劇的と言っても毒の含んだ皮肉なものではなく、微笑ましい喜劇だ。 恋に落ち、老人が能天気に浮かれ騒ぐさまはなんだか微笑ましい。 老境に入り、吹っ飛んだ作品を書く作家というのは案外多い気がする。
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