冒頭に「本書は、旧版タイトル『因縁霊の不思議』を改題復刻したものです」とあります。2002年9月下旬の国際児童図書評議会(IBBY)創立50周年記念大会で美智子皇后が英語で祝辞を述べられた際に竹内てるよさんの「頬」の一節を紹介されたのを受けて,昭和53年(1978年)8月初版の本を2002年11月に急遽強引に「改題」して,本文はそのままで出版されたんですな。
「まえがき」は以下だけです。
この書を不幸なりし私の生母に捧げる。
私は、何の故にかインカの神よりつかわされた。そして、死者の因縁と取り組むことこそ、私の使命であり、私は老年を迎えてその使命に立つ。
医学第一、因縁第二。人間の全き生涯を守らんがために、私をして生命を献ぜしめ、その苦悩のために私を舞はしめよ。
死者、この生きたるもののために働かしめよ。ふるさと、あの岩の洞にかえる日まで−−光の明るい国に……。(1ページ)
当然ですが,本書は旧タイトルどおり,中身は因縁とか霊に関する話がほとんどでして,竹内てるよさんは,晩年はその方面の仕事に没頭されていた様子がわかります。「頬」も掲載されてはおりますが,「竹内てるよの生涯」は明らかに言いすぎです。本書の内容を踏まえて言いますと後世によくないことが起きる「バチ当たり」な改題でありましょう。とはいえ,こと竹内さんに限っては,何でも許してくれそうですので大丈夫でしょう。(笑)
さて,残念ながら私は因縁や霊に関心がありません(本書に掲載された内容は,話としては面白いです)が,1つ気に入る詩が掲載されていました。ちょっと引用。「女性の幸」という作品。37〜38ページ。
こころ静やかに
幼きものに乳をあたふる
そのひとときの 深き女性の幸
(中略)
つゆほども
よこしまなる思いを許すことなく
今日の母の清浄を 遠き未来につなぐ
さあれ これにかわるべき偉業女性になし
仕事バリバリの女性やお乳の出ない女性,未婚の方などいろいろいらっしゃるので,こう思い切り断定してしまう詩が現在すんなり受け入れられるとは思えませんが,男性にはありえない幸せ,男性にはなしえない偉業ではあります。この詩に出会えただけでも本書を読んでよかったと思います。