90代の金融危機以降、アメリカ的な資本主義の思想が世界を席巻するようになった。そうした社会の変化が子供の世界観をも変えたことは間違いないし、親や教育者にとっては心配の種が増えたことも事実だろう。本書は、日本的で古典的な美しいエピソードと現代的な常軌を逸したエピソードを対比させることで、「お金の背後にある大切なこと」を子供に教える大切さを説いている。近年の拝金主義的な風潮に言葉で言い表せない疑問を感じている大人にとって、思わず手を打ちたくなるような内容であると思う。
一方で議論が直感の域を出ておらず、ステレオタイプ的な拝金主義の否定に陥りがちな点は、金融や経済のことを長年考えてきた私にとってはやや残念であった。例えば、お金で買えない価値がある一方で、工夫次第で(物質的な豊かさに限らない)かなり多様な豊かさをお金で実現できることももっと深く考察されるべきだと思う。
確かに、著者のエピソードには共感できる部分が多くあるし、初等教育の段階では非常に有意義である。しかし、貨幣経済の仕組みは非常に複雑で、直感的な例だけを以って子供に価値観を植え付けることは適切ではない場合も多々ある。将来の日本を支える子供たちが、資本主義と道徳的な価値観のバランスをとって豊かな社会を創造していくためには、さらに体系的・科学的な金銭教育が必要だと思う。