塩野七生という作家は 自分が女性であることを縦横無尽に使って
いる点では 特筆すべき作家である。好きな男に肩入れしている時の
塩野は 「だって好きだからしょうがないじゃない」と言い切って
いる。これに反論することは難しい。塩野自身が それを分かって
いて そう言っている。これを確信犯と言うのである。
そんな塩野の想い人の一人が マキアヴェッリである。彼は
「君主論」で 日本でもよく知られている。マキアベリズムという言葉
は 日本でも悪い響きを持って言われる。そんな彼の悪評に我慢が
ならないのが 深情けをしてしまっている塩野である。
本書で マキアヴェッリの生涯に親しく触れることが出来た。
そこで描かれる彼は 幾分が滑稽味を帯びた 我々と等身大の男で
ある。塩野は 彼を我々の目線に下げた上で その稀代の現実主義を
説く。
実際 「君主論」を読んで見ると 彼は 科学者の視点で人間を
語っているだけのように思えてしかたない。善悪を超えて 実態を
冷静に叙述する彼は 正しく科学者である。
そんな彼を 愛をこめて塩野七生が描き出す。面白くないわけがない。