タイトルからして吸引力があるんですが、わがまま、というよりは自分本位ということですね。
本書はヘッセの書簡などからあるテーマに沿った内容のものをピックアップした編集を施してあります。
そのあるテーマとは、「普通になれない自分」です。かのデミアンと同じテーマですね。
底本は様々ですが、本書中で最も私が好きになったのは両親、特に父親に当てた手紙です。この部分は特に「普通になれない自分」のテーマが色濃く出ていると思います。デミアンでは全編でこのテーマに挑戦しつつも、その表現方法がキリスト教的であったために、私は古くさく没頭できないと感じていましたが、この書簡ではヘルマン少年の素直な筆致によって、テーマにより共感し易かったと感じます。同調圧力というものに息苦しさを感じる種類の現代日本人は、デミアンよりもむしろこの手紙において、自分の相似を発見し、それを表出させる言葉に出会える、かもしれません。
これほど褒めておいて評点が3なのは、本一冊にするために他を寄せ集めたような冗長感があるためと、あまり上手いとは思えない翻訳のためです。まあ、すきずきでしょうが、私の好みではなかった。
以下、最も好きだった部分の引用
「おまえが自分自身以外の誰も愛さなくなってから、おまえはなんと貧しく、なんとひどく貧しくなってしまったことか」この言葉はぼくにはふさわしいものではありません。
以上、ヘッセに興味のある方には本書をお勧めします。