主人公は知行千石の旗本の次男に生まれながら、妾腹の子であったため、居住まいの悪さから、実家を出て裏店に住み始めた神名平四郎。しかし、生活のあてにしていた友人2人との道場創設は、その友人の創設資金持逃げにより頓挫してしまいます。とはいえ、今更実家に帰ることも出来ず、日銭を稼ぐ為に、剣の腕と口上を頼りに「喧嘩五十文、口論ニ十文、さがし物二百文」等々、市井のよろずもめごとの仲裁稼業を始める羽目になります。
剣の達人が、剣を頼りに日銭を稼ぐというストーリーは「用心棒日月抄」にも似ていますが、「用心棒」シリーズにあった「藩の密命を帯びて、黒幕を探して倒す」といった重いテーマやサスペンス性はなく、痴話喧嘩や養子探し等々、市井の人々の様々な相談を得意の剣と口で解決していく様は、主人公の楽天的な性格とも相まって、非常に面白く、読後感の爽やかなものです。著者の著作の中でもとりわけ明るい本で、著者の市井物ファンにお奨めの本です。