大学教授やルポライター等7名が2001年に刊行した70頁程のブックレット。2000年末、有明海の養殖ノリが大量に色落ちした。しかし、それ以前に1990年から諫早湾潮受け堤防建設工事が始まった頃から、海苔以外の漁業生産量は減少していた。とりわけ1997年潮止めが行なわれた後は、被害は顕著になっていた。無論、この有明海異変の原因には、大規模干拓、河口堰・ダム、港湾建設、地盤沈下、富栄養化、沿岸の都市化等、いろいろな要因が考えられる。しかし異変の直接の引き金となったのが、諫早湾干拓事業であることは間違いないと著者達は言う。更に著者達は、諫早湾・有明海の生態系のあり方、住民と自然とのつき合い方、海への山や川の影響、漁業に関する法的関係等について、住民の発言を交えつつ考察する。その結果、手遅れになる前に干潟に海水を再導入すること、異変の原因の調査、干拓事業の見直し、川辺川ダムの建設中止、漁協・漁業権のあり方の再検討等が提言される。以上の要約から分かる通り、著者達は基本的に公共事業反対・環境保護の立場から本書を書いている。この手の問題に詳しくない私に、著者達の見解の是非はよく分らない。また住民の発言も、過去の自然をやや美化しているようにも感じられる。ただ、有明海異変をただの環境問題に矮小化せず、それを取り巻く政治・法・経済・社会との関係の中で総合的に捉え、具体的な提言を行なっている本書の記述は、この問題への入門書として適切である。また、一見暴力的な漁民の抗議行動の背後にあるものを理解する上でも、本書は有益であろう。