「最近100年近く続いていた脳科学の常識が180度転換した」という大仰なフレーズで本書は始まる。その内容は以下のようなものである。
1. 脳は変わらないものと信じられていたことが最大の間違い。脳内で神経細胞がどんどん誕生し、日常の活動によって新しい回路が形成されている事実が明らかになった。赤ちゃんや子供といった若年層ばかりか、中高年になっても脳は一生を通して変わり続ける。
2. これまでは脳が体をコントロールするだけと信じられていたが、じつは、体を動かすことによって脳が変わることが明らかになった。脳と体の関係は一方通行ではなく、双方向であった。
3. 実際に運動しなくても、メンタルトレーニング、瞑想など、ある事柄に関心を向けたり、心の中に思い浮かべるだけで、運動した時と同じだけ、脳が変化する。脳を変えるポイントは、エクササイズ(運動)と関心を向けることである。
本書はまさしく上記の内容について説明してくれる。
1に関しては脳細胞の新生の歴史はロックフェラー大学のフェルナンド・ノッテボームが、カナリアから脳神経が新生することを発見したことから始まるが、今までの常識を覆すことがいかに大変かがよくわかる。
2で興味深いのはエクササイズで頭がよくなるということだ。イリノイ州にあるセントラル高校では通常の1時限に前の朝の7時10分に体育の授業をするそうだ。エクササイズした脳細胞を成長させた後に学習するのが効率的という説は眉唾にも聞こえるが、実際に成果も出ているとだ。また、エクササイズは脳を活性酸素から守り脳の老化を防ぐとのことで、ジョギング、水泳、サイクリング、ウォーキングなどのエクササイズは、非常にすぐれたアンチエイジング法とのこと。さらにエクササイズがうつ病を予防、治療することに関してもかなり詳しく記されている。
3の「メンタルトレーニング(メントレ)だけでも脳が変わる」という部分も興味深い。脳科学の観点からは何かを想像することと、実際に行動することの間にそれほどのちがいはなく、例えば眼をつぶってボールを投げるのを想像すると実際にボールを投げているかのように運動野が発火するため、想像するだけでその行為が上達するとのこと。
どこまで本当かなという部分はあるが、いずれにしてもいくつになっても脳細胞が新生するというのは中高年にとっては勇気付けられる話であった。