遠い昔大学の頃、友人と一生懸命青臭い論議をしたことがあった。それは日々をただ暮らし
ていくのではなく、意味を持って生きていくにはどうするのかということ。
しかし卒業後、目まぐるしい社会の中でそんなことを考える余裕もなく、ここまで辿りつき
少し振り返ってみる時間を得た今、出会ったのがこの本。
カリール・ジブランさんの「預言者」という詩篇の翻訳の前に、他人には理解できない病気
で苦しんだ柳澤さんが、この本に魂を救済されたことについてのエッセイを付しています。
遠くからオーファリーという町にやってきて12年間、そこに住む人に愛されてきたアルムス
タファという預言者が、生まれ故郷に帰るにあたっての経緯が1節、それから別れを惜しむ町
の人々からの問いへの彼の答が28節まで描かれています。
問答では、「愛」そして次に「結婚」と続き、「労働」や「商売」、「快楽」、「苦し
み」、「友達」、「教育」、「美」、「死」、「時間」といった社会に存在する上で想い悩む
課題の問いに対して、神から預けられた美しい言葉の答えが預言者から返ってきます。そして
最後の28節の「別れ」で、彼が答えてきた言葉は問うた人の中にもあることを述べます。
私は、とてもゆっくりと眼を通しました。そして今、眼についた所を声に出して読んでいま
す。
柳澤さんの選んだ優しい言葉とリズムのため、自分の声でなくあたかも預言者がそこにいて
話しているかのように、耳に心地よく響いてきます。
この本を読んで、もがいてきた間もちゃんと生きてきたのだと、肯定的に理解することがで
きました。そしてこれからの生き方に勇気を与えてくれます。