慶応大学医学博士による脳機能の図解解説書。脳の各部位について解剖学的特徴や機能など、最新のデータに基づき図解でわかりやすく紹介している。カラーの図を紙面の半分以上に用い、きわめて簡略化した文章で紹介しているために、他の専門書に紹介されている難しい内容もおどろくほどわかりやすい。約200ページの冊子に、多くの内容が網羅的に紹介されている。単に読むだけなら数時間あれば十分だが、脳の部位の名前などを覚えながら、他の専門書と併読し、数日かけてゆっくり読むべき書。高校生以上であれば誰でも、個人のレベルに応じた読み方が可能で、幅広い読者層を対象としている。
本書は間違いなく名著である。脳は数十の機能部位に分かれているために、それらを詳細に記憶しながら機能を理解することは非常に難しい。しかし、本書のつくりは、一般人は細かい部分の名前は覚えずに大まかな脳機能を理解する読み方ができるし、解剖学的知識のある医学部生にはさらに理解を深めることができる。したがって、あまり知識のない者にとっても入門書として面白く読めるし、あるていど知識のある者にとっては覚えづらい専門知識をしっかりと記憶できるような構成になっている。
難点は、参考図書や参考文献などが全く提示されていないため、各項目についてさらに詳細に学びたい者にとってはやや不親切である点。科学は年ごとに情報が更新されていくことを考えると、参考文献が何時誰によって報告されたのかを明示する義務があると思われる。
上記問題点を考慮しても、書の目的と有用性は推奨に値し、コストパフォーマンスはきわめて高く評価されるべき書。最近の脳科学の書で名著と考える『心の脳科学(坂井克之著)』や『脳研究の最前線・下巻(上巻はいまいち)』と併読したり、脳科学を楽しく紹介している池谷裕二氏の著書と併読すると非常に知識の幅と理解が広がると思う。間違いなく星5つの評価に値する。