さすがに大賞を取ってデビューした作者の3作目だけあって文章、構成ともにかなりの上作です。
「魔王も倒さず世界も救わない」、こんなキャッチコピーも素敵さバツグンです。
これならばぐいぐいと物語に引き込んでいってくれる…はずだったんですけどねぇ。
内容としては主人公が世話になっている宿の女将さんの危篤を孫娘に伝えるために奔走、もとい暴走してダンジョンの入り口を間違えて危険な道を持ち前の強運で奇跡的に踏破、ボロボロになりながらも必死に祖母の病状を伝える姿に心惹かれるヒロイン。
そんなヒロインの憧れを壊すわけにも…それに可愛いしとツケで泊まるわけにもいかないやと仕事を探していると一攫千金の話が…。
それにはまたあの危険なダンジョンに入らなければならず、都合のいいことに同じ宿に頼れそうな少女がいたので一緒に行ってもらおう。
とそんな感じで駆け出しの一冒険者の日常を描いた物語…と言えなくもない。
しかし「日常ほんわか冒険ファンタジー」という触れ込みでしたがほんわかな気持ちには到底なれず最初から最後まで随所随所でイラッとさせられました。
主人公がかなり残念…というか下手すると人によっては嫌悪レベルでしょう。
せめて主人公が違えばこの作者のレベルを考えると秀作になっていたかもしれないのに。
冒険ファンタジーで一味違うものを書きたかったんでしょうけどね、オーフェンとかみたいにちょっと普通な主人公じゃない主人公とか。
序盤だけならこの主人公でもいいだろうけど最後までってのはさすがにいただけない。
駆け出しどころかまだ一度も冒険を体験したことのない人間が、一攫千金しか興味ないぜとばかりにこつこつレベルを上げることすら考えず、「冒険」以外には目もくれようとしない。
冒険者が集まって来る街だからすぐに仕事は見つかるさと余裕をかました挙句、数日泊まれる程度は持っていたという所持金が底をついてもなお最低限のお金を稼ぐ努力すらしない。
宿の女将さんの好意でツケにしてもらってずるずるずるずる、そして今日も冒険者ギルドで仕事の斡旋を頼みに行く、ここから物語はスタートします。
しかしこのプロローグ時点でこの1軒を残して他の全ての冒険者ギルドからは出禁を食らっているという始末。
それにも関わらず最後に残った「高級」冒険者ギルドに「今まで一度も冒険者として活動していません」と堂々と履歴書を出すとか頭がおかしすぎる。
1カ月経ってもまだ初心者レベルの仕事からこつこつと、という考えに至れないという、そんな主人公に耐えられなければこのお話は苦痛でたまらなくなるでしょう。
なんていったって、結局この巻の最後まで成長しませんでしたから。
270Pくらいで、「…ぇ、そろそろ本気だすよね?」というわずかな期待…いやさ希望は見事に打ち砕かれました、アーメン。
とりあえず運が非常にいいのと、大切な人を助けるためにその一瞬だけでも頑張れる…というところが美点でしょうか。
まぁその後で普通にへたれるんですが。
基本日和見主義の他力本願、常時逃げ腰強運風味な主人公なので、記憶喪失にでもなって根本から性格を直してもらえないことには正直きついかな。
よっぽど2巻の評判がよくない限りは次巻以降はさすがに買えない…。