小学生の権力闘争というユニークな舞台で、マキャベリの大著『君主論』を解説した意欲作。
子供向け、と半分冗談めかして書かれているが、原作のエッセンスがわかりやすく過不足なく取り込まれていて、原作を読まれる方の導入としても十分な基礎情報がある。
作中の小学生同士は本音を隠し、常に互いに足を引っ張り合い相争う。
その政争劇は大人の世界もかくやの駆け引きの連続である。一見「よいこの」というタイトルとはかけ離れており、子供に素直にまっすぐ育って欲しい親としては、最も見せたくない類の本ともなり得よう。
が、それでも敢えて、本書は子供にこそ読んで欲しい。
私の知る限り、エリートの子弟は小学校高学年の頃には本書にあるような処世術は身に着けていたし、日本人は代々、本著の説くような外交戦を不得手としている。
「よいこ」が「よいこ」であるために必要な強さを補完する意味でも、或いはより高齢の読者が日々をより楽しく生きる「強かさ」を学ぶ意味でも、多くの人に読んで欲しい一冊。
が、上記に関して一点、本著を読む際の注意点がある。
覇道と言いつつも、主人公は基本的に「正しい」人間である。
人一倍の努力をするし、正義感や仲間を大事にする心を持ち合わせている。
肝心なときには王道も用いている。
彼の目的はクラス支配だが、それは自分のためだけの統治ではなく「みんなのため」という明確な芯がある。
本書において、その主人公の美質への言及は目立たない。
が、主人公の策は全てその美質を前提としている。
ここを見落として表面だけを解釈すると、本書への評価も得るものも真逆のものになる。
要注意。