本のタイトル、それは一言でその本の奥行きや深さを凝縮したもの。
「ゆびさきの宇宙」を読み終えて、まさにそのタイトルに凝縮された深みや味わいを実感した。副題にもあるように、盲ろうを生きる東大教授、福島智氏の人生に迫るノンフィクション。朝日新聞記者の生井氏が福島氏本人や数多くの関係者に何度も何度も取材をするなかで、福島氏本人の魅力、だけでなく、「盲ろう」者は何をどう感じているのか、という「宇宙」観にまで迫っている。
生井氏の定評あるストーリーテリングの良さゆえに、波瀾万丈の人物伝(よみもの)として面白いのは勿論のこと、日本の障害者福祉の現状理解にも役立ち、さらには「盲ろう」という極限状態になって福島氏が直面した孤独な「宇宙」の深淵、という哲学的領域にまで、読者を導いてくれる。障害者福祉の分野で、久しぶりに惹きつけられる一冊だった。