なぜ郵政は民営化されるのか。
著者もあとがきで書いておりましたが、小泉氏はその信が問われた総選挙で「公務員が38万人も減る」と言いました。ですが、それは間違いです。すでに郵政公社に関しては独立採算制が採られており、税金からは給料が支払われてはおりませんでした。
では他には?
「官のお金を民へ」という主張がありました。
ですが、これとても本書を読むとどうも正しくなさそうです。郵政の問題点を検討した旧大蔵省の官僚によれば、「郵貯はお金があってすごく強いから、力を削がなければとみんながいう。私にはほとんど理解不能だ。お金がたくさんあっても、運用がうまくできなければ、それは経営の足を引っ張るだけだ。」ということです。
実は郵貯はそれまで財政投融資の原資として大蔵省理財局に運用が任されていました。その代わりに特別の利子をもらっていたのです。それが利益の源泉でした。ところが財政投融資に批判が集まり、それがなくなると、郵貯のお金の運用先はほとんどが国債になります。
これは非常に利ざやの薄い商いです。しかも国債価格が上昇するとあっという間に逆ザヤが発生する危険があります。
しかも郵貯銀行が募集したディーラーには応募はなかったのです。というのも公務員が基準となっている給与体系ではバカらしくてやっていられないからです。ということはディーラーを自前で養成するか、他行を買収するしか手はありません。
さらに、郵貯の定額性貯金についても、6ヶ月たてば下ろすことが出来るため、金利が上昇する局面では預け替えが続発する危険があるのです。
つまり郵貯は巷間言われたように、「巨人」などではなく、むしろ足元が極めて脆弱な国立銀行ということになります。
では民営化は必要ないか、と言えば、実のところ「だからこそ民営化するべき」ということになるのでしょう。つまり「危ない国立銀行を早く民営化し、体力強化を目指す。そして破綻した場合の国費投入を回避する。」ということなのでしょうか。
ということは西川氏が目指す「スーパーメガバンク」路線が正解と言うことなのでしょうか。ですが、それは結局弱者切捨てにつながるということなのでしょうか。あるいは巨大なリスクを背負うことになるのでしょうか。
問題点の整理としてはとてもいいと思うのですが、本書は批判と不安を煽るばかりで、「ではどうする」という提言が無いのですよね。「多くのリスクと矛盾を抱えたまま船出する“異形の銀行”は何処へ向かうのだろうか」とか言われてもなあ、と思うのです。