イギリスの名高いベテラン児童絵本作家オークリーが1972年に発表して以後大人気ロングセラーとなった代表作シリーズの一冊です。本書は2011年に徳間書店から刊行された「教会ねずみとのんきなねこ」シリーズの旧版1990年代刊行「すぐ書房」版全8冊の一冊で、更に遡ると1970年代にはポプラ社から翻訳が出ていたとの事です。今から20年近く前の出版とあって新本の入手は困難で、私は本書を運良く古書で入手しました。「すぐ書房」版では〈 ねこのサムソン・シリーズ 〉と呼ばれていまして、やはり時代に全く関係なく変わらぬ面白さでした。
「冬になったら屋根の雨漏りで濡れねずみになるだろう」と嘆く悲観論者の学者ねずみハンフリーの言葉に仲間は皆憂鬱になりましたが、賢いねずみのアーサーは新聞記事を読んで良い事を思いつきます。ねこのサムソンをキャット・ショウに出場させて、みだしなみ賞の優勝賞金をゲットしよう!という計画で、ハンフリーの少々ずる賢い計略が見事に成功してみんな大喜びするのですが・・・・。
この絵本のカバーには大勢のネコたちがたくさんのネズミたちに向かって歯をむいたり、にらみをきかせたりしている絵が描かれていますが、にらまれている側のネズミたちはというと意外にも一向に怖がる様子もなく逆に舌を出してネコを挑発しています。まあ、こんな事は現実にはないでしょうけれど、それにしてもこの不思議な光景がヒントになるハンフリーの計略は舌を巻く見事さです。でも、やっぱりこれは悪い事には違いないですからバチが当たったのでしょうか、絵本の題名通りにねこのサムソンが2人の悪党どもに誘拐されてしまいます。後半は決して人間に頼らないハンフリーとアーサーの大活躍で、サムソン救出作戦が愉快痛快な読み心地です。結局は「悪銭身につかず」という昔からのことわざが実証された様な結末なのですが・・・・でも大丈夫です。絶対に読者をガッカリさせない作者の優しい思いやりの心が感じ取れるほのぼのとした幸せなラストに誰もがニッコリし大満足される事でしょう。