江戸時代、米をめぐってひどい苦労を重ねた将軍がいた。八代将軍・吉宗である。江戸の人口、ときに百万人。その巨大な胃袋を満たすために必要な莫大な米の確保が、吉宗の双肩にかかっていた。
享保八年七月、吉宗の側近である御用取次の加納久通は、各地から年貢米を廻漕するため、江戸内川に乗り入れる船にからむ不正に頭を悩ませていた。その半年前には、利根川と江戸川が交錯する境河岸において、近郷の村の庄屋・和泉屋六兵衛が惨殺されている。六兵衛は以前、目安箱に代官の不正を訴え、それが事実だと判明したことのある実直な人物だった。
船年貢にまつわる不正と庄屋の死に関連があると見た久通は、配下の竜巻誠十郎を境河岸に派遣する。莫大な利権を生む湊には、様々な思惑を抱えた人間が跋扈していた。その中には、誠十郎と以前闘い傷を負った旗本の小笠原英正、その部下で誠十郎の友人である梶田重之介も含まれていた。
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