廣木隆一監督と脚本の荒井晴彦そして主演の寺島しのぶの「ヴァイブレータ」トリオによる作品です。本作の主人公は鬱病の女性ということで「ヴァイブレータ」よりは少々特殊ですが、30代の未婚女性に共通する孤独感、不安感、都会生活者の浮遊感をやわらかくとらえています。
俳優陣は実力派が揃いましたが、壊れかけた女を寺島しのぶの存在感を感じさせながらも自然な演技、彼女と接する豊川悦司や松岡俊介などの、やさしい(?)ダメ男ぶりがいい。演出的には、BGMを極端に廃してワンシークエンス・ワンカットに近い長廻し。カラオケ1曲ワンカットなんてのもあった。(←これは必見です)
他にも、屋上の洗濯物の周りを寺島しのぶが歩くシーン、寺島と妻夫木聡がタイヤ公園に入ってくるシーン、寺島のアパートを豊川悦司が初めて訪ねるシーン等々。無駄にカットを切り替えず俳優にじっくり演技をさせている。そして、人の動きもカメラの動きも共にとても滑らかで、緻密に計算された感じがします。
舞台となった蒲田の風景・環境もこの映画の魅力のひとつとなっています。東京の下町ではあるのだけど、浅草のようには「粋」で無い雑然とした下町『蒲田』。タイヤ公園、力道山の銅像なんかがその象徴か。初めて来たときから、どこか懐かしくて、夢で歩いたことがあるみたいにしっくりきたという、主人公の言葉がしっくりくる。
立ち直った主人公の眼前を通り過ぎる現実。ラストはこうでなければいいなと思った通りになってしまったので、少々残念ですが非常に印象的でした。静かだけれど、思いのほか厳しい...。