US版『ヴォーグ』誌の料理ライターである著者が、とことん美味しいものを探求するエッセイ。とにかくその情熱といったら並大抵のものではない。自分の舌と足を駆使し、最新の調理器具を試しまくり、あらゆる人脈を使う。
常にマイ・ソルトを持ち歩くほど「グルメ」を自称する著者は「塩の味はどれも同じ」というショッキングな論文を見るやいなや、プライドをかけて珍重な塩をかき集めて味の判定に勤しむ。ピザを美味しく焼き上げる釜の温度を測るため、銃の形をした「携帯型非接触温度計」をオーブンに向かってかまえ、自宅でも研究に余念がない。パリの街中のパン屋を巡りつつ、昔ながらのパリのバゲットがなくなりつつあると嘆いたかと思えば、最高のパルメザンチーズを求めて奔走し、アイシングでごてごて飾られたウェディング・ケーキが象徴するものに感慨を覚える。
食にここまでこだわるのは贅沢だろうか。でも丁寧に作られた美味しいものを、その素材や作り手に感謝しつつ味わう、というのが著者の基本姿勢。そのための苦労は厭わないということ。食いしん坊にはたまらない一冊だ。