雪舟、狩野永徳、長谷川等伯、俵屋宗達、尾形光琳、英一蝶、池大雅、円山応挙、伊藤若冲、葛飾北斎、歌川広重、という近世絵画の歴史を俯瞰して眺めた時に、巨人と目される11人の絵師を取り上げ、1人10数頁程度の解説と何点かの作品を掲載した著作です。その絵師の代表作が基本的にカラーで載っており、その他に押さえておくべき作品もモノクロで紹介されています。
筆者前田恭二氏は、読売新聞社文化部に所属し、美術を担当していますので、その記述は読みやすく、分かりやすく丁寧でかつ日本美術の研究成果も押さえたものになっています。本書は日本絵画を鑑賞する際の助けになりますし、日本画の発達過程とそれの影響力、その後の展開等、美術史における関係性が分かるように記述されています。
断片的な知識はあっても、日本絵画の変遷をたどるのに必要な系統だった知識は持ち合わせていないのが常です。美術館で近世の絵師の作品を鑑賞したとしてもその作風が突然変異的に現れたものなのか、先人の画風を勉強した中で発展したものなのかを見極めないと、その魅力と画業を理解できないことがあります。
先達は必要です。
11人の選定は妥当と言えますが、出自の定説が確立していない東洲斎写楽や、世界的に有名な喜多川歌麿などの浮世絵師を付け加えてもらうと本書に関心を持つ人が増えるのではないかと思います。また長澤蘆雪、曾我蕭白、呉春、与謝蕪村、酒井抱一、司馬江漢、河鍋暁斎なども著者の解説で読みたいと思いますので、いつの日にか増補版を期待したいですね。