僕はこの人の作品をこれまで読んだことが無かった。
芥川賞を受賞した「一人日和」も未読だ。
「やさしいため息」は孤独なOLのもとに、行方不明の弟が突然現れるところから物語が始まる。
弟は彼女に今日一日何があったのかを聞き、それを記録に残していく。
主人公のOLは、実は会社で誰とも口をきかないほど孤独感にさいなまれているのだが、そのことは弟に話さず、同僚のOLに食事に誘われたり、といった架空の物語を語っていく。
やがて弟の友人で誰ともかかわりを持とうとしない男の登場で、ようやく物語に起伏がつきかけるのだが、その恋も成就することなく再び孤独で平凡な主人公の日常が続いていく。
弱冠25歳の青山七恵の凄みは、その文章力にある。
会話体の運用にまだたどたどしいところはあるが、自意識過剰な「孤独感」のいやらしさを、ここまで突き放して描く力は尋常ではない。
以前、綿矢りさの「蹴りたい背中」を読んだときも感じたが、現代の若者の、まるで霞がかかったような「性欲」への眼差しは、我々の時代には無かったものである。そのことを再び筆にできる力を持った新人が登場したような気がする。