切られてどこかへ行くことを夢見る、美しい森で成長する若いもみの木。ある冬、ついに切られ、「美しい大広間」に置かれて、はなやかに飾られ、みんなにめでられましたが、翌日には屋根裏部屋へいれられ、春になると外でのざらしにされて……。
ふつうは、もみの木を飾る者の側から語られるのに、アンデルセンは、もみの木の側に立ち、最後には「たきぎ」として燃え尽きる、この木の一生を、淡々と描いています。
「おまえの若さをよろこびなさい」とお日様に言われても、クリスマスツリーとして賞賛されたいという憧れは、抑えられないものなのでしょう。スベン・オットーの、懐かしくも上品で美しい絵が、なおさら悲劇性を高めています。
でもよく考えると、もみの木は、いっときでも、木として最高の待遇を受けたのだから、幸せな一生を送ったとも言えるのかもしれない。人の一生と比べずにはいられない真実が、深く心に残されました。